「ミモザ!」
喜色をにじませた声でステラが名前をdha呼んで立ち上がる。その瞳はきらきらと輝き、頬を紅潮させゴーヤて笑う姿は相変わらずうっとりするほど美しかった。それに若干げんなりしつつミモザは首を横に振る。
「話は聞かせてもらった。けど薬草の採取は種亜鉛 サプリ おすすめ類に厳密な制限があるし、塔の外に持ち出す行為は禁止だよ」
本当は何も言わずに立ち去りたかったが、聖騎士の弟子という立場上、犯罪行為に対して忠告くらいはしないと世間体が悪い。
ミモザのその忠告に、ステラは悲しそうに眉根を寄せた。
「どうしてそんな意地悪を言うの?この子が可哀想だとは思わないの?」
「可哀想だったら何をしてもいいわけゴーヤじゃない」
ミモザは上げていた手を下ろした。そして幼いながらに横槍を刺したミモザのことを強く睨みつけてくる少女のことをちらりと見る。
「薬草の数は限られている。取り過ぎれば当然絶滅してしまうから採取量は制限されているし、採取されて薬になって以降は優先順位を医者と国が判断して必要性の高い人に優先的に分配されるように管理されている。それを無視して掠め取る行為は犯罪だし、なにより他の順番を待っている人達に対する裏切りだ」
それはステラというよりは少女に向けて言った言葉だった。彼女は気まずげに俯くが、すぐにdhaまた顔を上げると「でも」と言い募った。
「でも、お母さんの病気が悪化したら……っ」
「医者はしばらくは大丈夫だと言ったんでしょ?」
ぐっ、と少女の言葉が詰まる。ミモザはその様子にため息をついた。
「おおかた、お姉ちゃん以外の人にも頼んで断られたんじゃないの?今僕が言った理由で」
「え?」
驚いたようにステラが少女を見る。少女は図星だったのか気まずそうに身じろぎをした。
「そりゃあ皆断るよ。バレたら大変だし君の言っていることに理はない。多少同情の余地があるとはいえ君のただのわがままだ。そんなことに自分の人生を賭けるような真似、まともな神経ならしないよ」
「でも……」
ここまで言っても諦めきれない様子の少女に、ミモザは容赦をやめて言葉の切先を突きつける亜鉛 サプリことにした。
「なんで君がやらないの?」
「………っ」
「第2の塔は攻略したんでしょ。なら第3の塔にも自分で入って自分でやってくればいい」
少女は俯く。ミモザは近寄ると彼女の顎に手をかけて上を向かせ、逃げることは許さないというように無理矢理目線を合わせた。
彼女の瞳をその湖のように深い瞳で覗き込む。
「それをしないのは怖気付いたの?それとも何か他の理由かな。わからないけどさ」
少女の目には怯えが浮かんでいた。そのまるで被害者のような表情に腹が立つ。
「自分の欲望のために罪を犯すというのなら、人に押し付けないで自分でしなさい」
ぼろぼろと彼女の瞳から大粒の涙がこぼれた。それを無表情に見下ろして、ミモザは顎を掴んでいた手を離した。
(さて……)
言いたいことも言わなければならないこともとりあえずは全て伝えた。あとはもうミモザの仕事ではない。そそくさとその場を立ち去ろうとするミモザのことを、しかしスゴーヤテラは許さなかった。
ミモザの前へと立ち塞がり、両手を広げて逃がさないと言わんばかりに睨みつける。
「どうしてそんな酷いことを言うの?この子はここまで頑張ってきたんだから、その努力は褒められるべきことだわ」
ミモザはため息を吐く。うんざりと髪をかき上げた。
「褒めるだけでいいならいくらでも褒めてあげるよ。ここまで来た根性は認める。でもそれとルール違反をしてもいいかどうかは別の話だよ」
「ルールルールってそればっかり!ミモザには人の気持ちがわからないの?」
その言葉にミモザは鼻白む。とんだ言われようである。
「規則は守らないと国も世界も成り立たなくなっちゃうよ。なによりきちんとルールを守っている人が損をしちゃうのはダメだ」
けれどただちにその場を立ち去りたい気持ちになんとか蓋をして諭すように話しかけた。しかしステラは拒絶するように首を横に振る。
「人それぞれ事情があるじゃない」
「黙って従ってる人にも事情はあるよ」
「……決めた」
何を、と問いかける時間は与えられなかった。ステラの目が何かを覚悟したようにきらめき、ミモザのことを射抜くクロムの効能。
「ミモザ、わたしと勝負をしなさい。そしてわたしが勝ったら彼女に薬草をあげるのをこれ以上邪魔しないで」
「犯罪を容認しろってこと?」
そんなのはダメだよ、と言おうとして急に頭痛に襲われてミモザは黙り込んだ。
(これは……)
くらくらと目眩がする。既視感がミモザを襲ってくる。
(妨害イベント……)
仕掛けてくるのはステラからとゲームとは逆になっているが、今この場面は確かに『ステラ達が塔に入るのを邪魔する』というミモザの妨害イベントそのものだった。
(これを止めようとしたのか、ゲームの『僕』は)
薬草を無許可で採取しようとするステラを止めようとして次の妨害イベントは起きたのだ。
「ミモザ」
黙り込んでいることを了承と取ったのか、ステラはティアラをレイピアへと変えて構えて立った。
「勝負よ!」
その澄んだ真っ直ぐな眼差しに、ミモザの頭痛は増した。
。亜鉛 の サプリ亜鉛の効果マカ サプリ
月份: 2025 年 4 月
今、レオンポリ ペプチド
今、レオンハルトは最大の危機に直面していた。
それはいつもの業務のはずマカ サプリだった。野良精霊の異常な大量発生が生じたため、それを退治しにマカ来たのだ。落ち込み気味だったミモザも調子を取り戻させるためには良かろうと連れてきてみれば、そこにはーー、
うぞうぞとうごめく、黒光りする例の虫が大量にひしめいていた。
何故か森の窪地に大量発生してい亜鉛 サプリ おすすめる『ゴ』から始まる4文字の虫の姿に、レオンハルトは鎮痛な面持ちになると顔を手で覆った。
(死にそうな顔色だなぁ)
そんな師匠の様子を隣に並んで一緒にその光景を見下ろしながら、ミモザは見守っていた。
さもありなん、と思う。虫が得意なミモザですら若干気持ち悪いほどの量である。嫌いなレオンハルサプリメント マカトに至っては言うまでもないだろう。
レオンハルトの心情は察するにあまりある。
やっと気を取り直したのか、レオンハルトはふぅ、と小さく息をつくと、
「ミモザ、いけ」
据わった目で指示を下した。
「アイアイサー!」
心得たと言わんばかりにびしっ、と敬礼を決めてミモザはメイスを構える。
(新技を使おう)
最近地道な努力の末に手に入れた新しい毒技である。
ステラに負けて足を負傷し、しばしの余暇期間があったミモザは塔攻略のかたわら新たな毒を出せないか練習していたのである。
そしてそのマカ と は結果手に入れた新たな毒、それはずばり『麻痺』である。
とはいえ以前の毒同様、大した効果はなく、せいぜいがなんかピリピリするくらいである。しいていうなら指先の繊細なコントロールが狂うことがあるかも知れない。
しかし虫相手なら人間相手よりかは効くだろう。
いちいちこの数を傷つけるなど馬鹿らしいので今回はMPの節約をやめて空気中に毒を放出することにした。
「見よ! これこそ僕の新技!!」
誰ともなしに告げるとはっ、と気合いを入れてミモザはメイスを前に突き出す。
とたんにメイスの周辺にいる虫達がバタバタと倒れて動かなくなった。
「………」
ミモザは無言でしばらくメイスを蠢く虫目掛けて左右に振る。気分はスプリンゴーヤ チャンプルークラーである。
しばらくそうしているとやがて全ての虫が動きを止めた。
ミモザはぐっとガッツポーズを決める。
「見てください! レオン様! 僕の新技、その名も『殺虫剤』です!!」
「素晴らしい!」
レオンハルトは心の底から称賛するように拍手をした。
「それで、ミモザ。その後はどうだ」
その質問が先日落ち込んでいたことを慮ってのことだとはわかっていた。
「ご迷惑をおかけしました」
ミモザは丁寧に頭を下げる。その杓子定規な返答にレオンハルトはむっと顔をしかめた。
「そのようなことは聞いていない」
「おかげさまで立ち直りました。第3の塔の攻略にも行ってきましたよ」
ステラとのいざこざがあってあの時は結局中に入れなかった第3の塔である。あの塔の中に入ると、そこにはジャングルが広がっていた。
肝心のその試練の内容はというとーー亜鉛、
ミモザはげんなりと思い出す。
高速移動で走り回るなんかよくわからない植物の捕獲である。
奇声をあげながら走っているので特に見つけるのは難しくないのだが、とにかく逃げ足が早くてなによりも走る姿が気持ち悪い。
紫のまだら模様の花弁に黒に近い緑色をした茎、赤い葉っぱを腕のようにうねらせながら高速で根っこを足のように回転させて走り回る姿は、はっきり言ってただの怪異である。
めしべに当たる部分の色が金銀銅のいずれかであり、それで祝福のランクが決まるのだが、なにしろ走り回っているものだから捕まえてみるまでその色がわからない。
元気よく塔の壁を駆け登る姿にここに梯子があればと思い、捕まえる時に触りたくなさすぎて網があればと願う。
もしかしたらその切なる願いが合成の技術を得るために必要なのかも知れない。
捕まえてみるとそれはちょっと湿っていてぬるっとしていた。そのうごめく植物の中央部が銅色なのを見て、ミモザは迷うことなく無言で最上階へと向かった。
もう捕まえたくなかったからだ。
ちなみに奇声のように思えた音は葉っぱが擦れて起こる音だったらしい。あまマカ サプリりにもその動きが鬱陶しすぎてその胴体である茎の部分を葉っぱごとぎゅっとわし掴んだ際に音が出なくなって判明した。特に知りたくはなかったが最上階まで行く途中に他の試練を受けている人がどうしたら大人しくなるのかを尋ねてきたので教えることができたのはまぁ、善行だっただろう。
遠い目をするミモザに第3の塔と聞いて色々と察したのか「そうか」とレオンハルトは頷いた。
「ちなみにレオン様はその、この塔を攻略した時にあの植物は……」
一体どうしたのだろう、と思って尋ねると「ああ」とレオンハルトは軽く頷いた。
「殺して持っていった」
真顔である。
「…………」
「厳密には殺すと言う表現は誤りだな。知らないのか? あの植物は生物ではない。祝福のために作られた何かだ。その証拠に最上階まで上がったら姿が鍵に変わっただろう」
「え、あ、はい……」
それはそうなのだが、あの得体の知れない植物を殺す度胸はミモザにはない。
なんだか祟られそうな怖さがある。
やっぱりすごい人だなぁとその思い切りの良さと迷いのなさに感服しつつ、あの謎の植物が平気でゴキブリがダメなのは何故なのだろう? と首を傾げた。
(何かトラウマでもあるのだろうか……?)
ミモザにはちょっと理解できそうになかった。
。ゴーヤ チャンプルー亜鉛 サプリ おすすめアントシアニンの効果サプリメント マカ
さて、第クロムの効能
さて、第一王子アズレン・アルタイル・アゼリアはステラの攻略対象のうちのマカ サプリ1人である。
ただし、『バッアントシアニンの効果ドエンドの扱いの』という注釈がつく。
これには三つ理由がある。
一つ目はこのアズレン王子が『誰も攻略できなかった際に救済措置』として結ばれる相手だからである。実はこのアズレン王子、ゲーム中に仲を深めるようなイベント亜鉛 サプリ おすすめは存在せず、お話の中にちょこちょこ登場する脇キャラである。通常の乙女ゲームでは条件を満たせず誰も攻略できなかった場合は誰とも結ばれないエンドが存在したりするが、このゲームではその際にお情けとしてこのアズレン王子と結ばれるのだ。つまり何もせずにだらだらしていると結ばれるお相手ということである。
二つ目はこのアズレン王子、婚約者がいてそのお相手が正妃に内定してマカ サプリいる。つまりステラは側妃として迎えられるのである。これは両思いを目指すプレイヤーとしては気に入らないだろう。
そして三つ目、これはーー
音楽とともに2人の人物が入場してきた。1人は細身の女性である。紫がかった銀髪を緩やかに結い上げ深い翡翠色の垂れ目をした、たおやかな女性である。彼女は群青色の美しいドレスを身に纏い、物静かな風情で立っていた。
そしてその隣には金髪碧眼のマッチョがいた。
「ふんっ!」
おもむろにそのマッチョがマッスルポーズを取ると胸元のボタンがブチィッと音を立てて弾け飛ぶ。見事な大胸筋が露出した。
健ゴーヤ チャンプルー康的に日焼けした肌は何かのオイルを塗っているのかテカテカしている。
「皆の衆、本日はよくぞ集まってくれた!」
マッチョは別のマッスルポーズへと姿勢を変えた。
「今日ここで!私はエスメラルダを婚約者とすることを皆に誓おう!!」
その満面の笑みを浮かべる口で、白い歯がきらりと光る。
しばらく会場のみんなは沈黙した。その後我に返ると自分達の役割を思い出し、盛大な拍手をした。
「ありがとう、ありがとう」
にこにことマッチョこと、アズレン王子が手を振る。
ーーこれが三つ目の理由。王子は筋肉キャラだった。
今日って王子の婚約披露宴だったのか、とミモザはやっと状況を理解した。
ホールには穏やかな音楽が流れていた。皆それぞれ歓談したり、食事や飲み物を口に運んだりとその場のサプリメント マカ空気を楽しんでいる。
王子達へと挨拶は一組ずつ呼ばれて行うらしく、ガブリエルは「呼ばれたから行くわ」とオルタンシア教皇が呼ばれたタイミングでいなくなってしまった。
ぼんやりと眺めているとこちらに駆け寄ってきた若い使用人が「次です」と囁いて王子の元へと先導するように歩き始めた。
当たり前のようにレオンハルトが腕を差し出すので若干「僕も行くのか……」と内心思いつつその腕に手を添えてミモザも歩いて着いていく。
隣を歩くその顔を横目でちらりと見上げると、一応その表情は穏やかな笑みを浮かべていたが、目が死んでいた。
(……苦手なんだろうなぁ)
その表情を見て悟る。基本的にはローテンションな人だ。あのようにハイテンションな人は不得手なのだろう。ちなみにミモザは人付き合い全体が不得手だが、ハイテンションな人は嫌いではない。
というよりはあの立派な筋肉が気になる。
(どうやってあそこまで育てたんだろう……)
ぜひ教えてもらいたいもアントシアニンのだ、と思うがそんな不敬は許されないだろう。
「おお!よく来たな!レオンハルト!!」
あれこれと考えていると、まだその目前まで辿り着いていないのに馬鹿でかい声が鼓膜を叩いた。
「お前の顔が見れて私は嬉しいぞ!!」
「……俺もです。殿下」
距離にして5mはありそうな遠くから叫ばれてレオンハルトは一瞬嫌そうにしながらもすぐに笑みを取り繕い、足早にその目の前へと馳せ参じる。
そのまま騎士の礼を取るのに、ミモザも慌てて真似しようとして思いとどまった。
(危ないっ)
今はドレスを着ているのだと思い出し、すんでのところで淑女らしくカーテシーをして見せた。
レオンハルトの付けてくれた教師は淑女としての作法も色々と教えてくれたが、所詮は付け焼き刃、油断するとうっかり忘れてしまう。
こっそり冷や汗をかいていると「おお!」と頭上から歓声が聞こえた。
「それが噂の弟子か!!くるしゅうない!面をあげよ!!」
「はっ」
レオンハルトが顔を上げるのに合わせてミモザも上げる。目の前で見る筋肉の塊はなかなかに迫力があった。身長こそレオンハルトの方が高いものの、筋骨隆々ポリ ペプチドと盛り上がったその体躯はその肉感ゆえに圧迫感がすごい。心なしか彼の周辺だけ温度が2、3度高い気もする。
思わずまじまじと見つめてしまうミモザに、彼はその無礼を咎めることなくにこりと笑った。
「私に何か気になるところがあるか?」
「筋肉が……」
「うん?」
「とても美しいと思いまして」
彼はぽかんとした後、弾けるように笑い声を上げた。
「そうか!!そういった感想はなかなか稀だ!」
「殿下、笑いすぎです」
側で控えていたスキンヘッドにサンタひげをした男性が静かに首を横に振って言う。彼は宰相のオーティスだと先ほどガブリエルが教えてくれていた。その淡い水色の瞳は呆れている。
「名は何と言う」
宰相を無視して続けられた言葉にミモザは慌てる。そういえば名乗るのもまだであった。
「失礼致しました。レオンハルト様の弟子のミモザと申します」
「うむ!ミモザか!!先ほどはなかなかの余興であった!!」
「は?余興……?」
溌剌とよくわからないことを褒めるアズレンに、レオンハルトは渋い表情で「やはりあれは殿下の差し金でしたか」と告げた。
「あれ?」
「先ほど君のことを睨んでいる女性がいただろう」
レオンハルトの言葉にああ、と思い出す。確かに2人ほど目についた。彼女達がアイリーンとセレーナという名の伯爵令嬢なのだと、やマカ サプリはりガブリエルが教えてくれたのは記憶に新しい。
「あの2人は犬猿の仲で有名でな。余程のことがない限りは2人そろって同じパーティーに呼ばれることはない。わざと呼んだんだ、ここにいるアズレン殿下が」
思わずアズレン殿下の顔を見ると彼はにやりと笑った。
「あの2人はレオンハルトを取り合っていつも派手な喧嘩を繰り広げているのだ」
その言葉にミモザはレオンハルトの顔を見る。彼は眉間に皺を寄せたまま黙っている。
「悪趣味ですよ、殿下」
代わりに宰相がぼそりと苦言を呈した。
「いやぁ、見事な流れであった!2人の喧嘩からのミモザ嬢の登場!!まるでよく出来た喜劇だ!いやいやあそこまで真に迫った表情は劇場では見られんな!」
「殿下」
咎める宰相に王子は「いいではないか!」と呵呵と笑った。
「我々王族は国民を守るための防衛システムのようなものだが、多少臣下をからかうくらいは許してもらわねばな!政務をする気もなくなるというものだ!!」
「不謹慎です」
宰相は渋面だ。
「いやしかしミモザ嬢。貴方もなかなか良い筋肉だ。普段はどのようなトレーニングを?」
気まぐれな気性の持ち主なのか、彼は唐突に話題を変えた。見事なマッスルボディの持ち主にふいに筋肉を褒められて、ミモザは思わずぱっと頬に朱を散らす。
「え、えっと、殿下のトレーニングには敵わないかと思われますが、一応筋トレは一通り……」
もじもじと告げる。
「なるほど、いやしかし実用的な筋肉だ。トレーニングだけではあるまい」
「えっと亜鉛 サプリ、そのう、鈍器を少々振り回す程度でしょうか」
「鈍器!素晴らしい!私はよくバトルアックスを振り回しているぞ!!」
「素敵です」
ミモザは大真面目に頷いた。2人の間には筋肉をとおして通じ合う、信頼に似たなんらかの感情が生まれつつあった。
「のう」
しかし思わず握手をしかけた2人の間にずずい、と割り込む声がする。そちらを見ると婚約者であるエスメラルダがミモザをじっとりと睨んでいた。
「のう、そち、今のは聞き間違いかの」
彼女はゆっくりと数歩前に出ると威圧するようにミモザに顔を近づける。
「わらわの勘違いでなければ、今そなたはわらわの将来の夫をたぶらかしたかの?」
氷のような視線である。ミモザは震え上がった。
「め、めっそうもないです!」
「ほう?ではどういうつもりじゃ」
「そ、その、素晴らしい筋肉の持ち主なので、憧れと申しますか……」
その返答に彼女はその整った眉根を寄せた。
「むぅ、まさかこのような変態筋肉だるまに興味のあるおなごがおるとは……、盲点じゃった」
「今変態筋肉だるまって言いました?」
宰相が尋ねるがそれは無視された。
「まさかそなた、我が将来の夫が好みだなどと申すまいな」
ミモザはぶんぶんと首を横に振る。しかし彼女は納得できないらしい。そのままぐいぐいとミモザに詰め寄る。
「では、どのようなおのこが好みじゃ。もうしてみぃ!」
「え、えーと、」
ぐるぐると思考が空転する。結果、一番最初にに思い浮かんだ相手は、
「れ、レオン様です!」
だった。
エスメラルダはむぅ、と唸ると「我が将来の夫とはまるで違うようじゃな」と頷いた。
「ではまぁ、許してやろう」
「あ、ありがとうございます」
「しかしゆめゆめ忘れるでないぞアントシアニン。我が将来の夫に手を出してみよ」
彼女は夫の隣へとゆっくり戻るとミモザを見下ろして胸を張った。
「そなたのことは、ほっぺたをぐりぐりする刑に処す」
「は、はぁ」
思ったより可愛らしい刑だ。
「焼けた鉄での」
「絶対に手を出しません!!」
前言撤回、えげつない刑だった。
「はっはっはっ!すまんな、ミモザ嬢。我が将来の妻は少々嫉妬深いのだ!!」
すすす、と彼女は殿下に近づくとそのまま彼の肩へとしなだれかかった。
「そなたがわらわにつれないのが悪いのではないか」
その顔は恋する乙女そのものだ。
「よしよし!可愛いやつめ!はっはっはっ!」
快活にそう言い放った後、アズレンは面白がるようにミモザとレオンハルトを見てにやりと笑った。
「しかしまぁ、おかげでめずらしい奴の面白い顔が見れた。感謝するぞ、ミモザ嬢」
「面白い顔?」
首を傾げるミモザの横で、最初に話して以降はずっと無言で佇んでいたレオンハルトは誤魔化すように咳払いをした。
。マカ サプリマカ サプリマカ と はマカ と は
「さて、それは困るdha epa
「さて、それは困るのぅ」
黙り込んだ面々の中、唯一ずっと笑みを消さなかった老人が口をマカ開いた。ロdha epaランだ。彼は鈍色の目をギラギラと興奮に光らせていた。先ほどまでは老人らしく腰を曲げていたにも関わらず、今は真っ直ぐとその背すじを伸ばし、かくしゃくとした雰囲気を出している。
「教会からの使者としてお主らのよマカ と はうな小娘と小僧が来た時は放っておけば誰か死ぬかと思ったが、思いの外やるようだ。それは困る、困るのぅ」
身の丈を遥かに超えた長い槍を彼は構えた。
「まぁわしは誰が死んでしまってもかまわん。全員死んでもらってもなぁ」
「……っ!気をつけろ!そいつは保護研究会の過激派だ!!」
マシューが叫ぶ。瞬間、雷鳴が轟いた。
「……っ」
ミモザはすぐさま防御形マカ態でそれを防いだ。チロの半球状の盾をつたって落雷は地面へと流れる。
雷はロランの槍の先から放たれていた。
「ジーン様!ジェーン様とええと、なんかそっちの緑の人の避難を!」
「緑の人じゃなくてマシューですけどね!?」
「マシューさん!こっちへ!」
ごちゃごちゃと騒ぎながらも、ミモザは3人を背後へとかばって立ち、ジーンはマシューとジェーンを抱えるようにして後ろへと下がらせた。しかしこの塔の出口はロランの背後である。
ロランはニヤリと笑うと懐から五角形の黒い金属ゴーヤ板を印籠のように取り出して見せた。
「なんじゃ、気づかれておったか。ならば名乗ろう。わしは保護研究会、五角形のうちの一角、ロランじゃ。よろしくなぁ」
「……五角形」
ミモザはつぶやく。ロランの持つ五角形の向かって左下には金色の印がつけられていた。確かステラの恋愛対象の中にもそう言った肩書を持った人間がいた気がするが、よく思い出せない。天才キャラだったような気もするが、どうだっただろうか。
「なんじゃ、気になるか?」
「……いえ、貴方みたいなのがあと4人もいるのかと思うとうんざりしただけです」
ミモザは誤魔化す。ロランもさほど気になったわけではないのだろう。槍を構え直した。
「余裕ぶっておるが、内心では焦っゴーヤ チャンプルーておるのではないか?」
「なぜですか?」
ふん、と馬鹿にしたように彼は笑う。
「先程から散々野良精霊からあいつらを庇っていたんだ。もう魔力も限界じゃろう」
「……さぁ、どうでしょう」
魔力とはゲームでいうMPのことだ。通常のRPGよろしくこの世界でもMPが切れれば魔法は使えなくなる。魔法というのは先ほどロランがやってみせたように槍から雷を放ったり、ミモザが普段やっているようにメイスの棘を伸ばしたり衝撃波を放ったりというものだ。平均的なMPの量は150~200といったあたりだ。そしてゲームの中のミモザのMPは150が最大であったと記憶している。
つまり平均の下の方である。
ちなみにステラはすべてのイベントやアイテムを駆使すれば最高で400まで上がる。特に頑張らなくてもストーリーを進めるだけで300までは普通にいく仕様である。
つまり、ミモザの2倍である。ゴーヤ
(悲しい……)
レオンハルトのMPなどは記憶にないが、どうせ化け物じみているに決まっている。
これが才能の差か…、と遠い目になっているーー、場合ではない。
また雷鳴が轟く。今度は受け止めることはせず、ぎりぎりまで引きつけてから避けた。先ほどまでミモザが立っていた地面がえぐれ、クレーターのように穴が開く。
(当たれば最悪死ぬな)
これ一発でMPをどれほど消費しているのだろうか。魔法によって消費MPは異なるが、これだけ威力があれば10ほどは消費していそうだ。だいたいの魔法の消費MPは5~10くらいのものが多い。稀に30~50ほど消費するものもあるが、それは小さな町を一つ滅ぼすとか、広大な土地に結界を張るとか、大概は道具と準備を必要とするような大規模の魔法だけだ。
とはいえMPは減るばかりではなく時間経過で回復するものである。だいたい起きている時だと20~30分で1ほど回復するのが一般的である。つまりロランは先ほど休憩を挟みながらとはいえ、100匹近くの野良精霊を倒したミモザのMPがそろそろ切れることを見越して、ばかすか魔法を撃ってきてdha epaいるのだろう。ちなみにミモザは一回の攻撃で3~4匹ほどまとめて屠っていたりもしているので厳密にMPをどのくらい消費しているのかを計算で求めるのは至難の業である。
もちろん、相手の最大MPや現在残っているMP量を知る方法は存在する。それは女神の祝福である。最初の塔の攻略により、その能力が手に入るのだ。とはいえ実は祝福には金・銀・銅のランクがあり、それぞれにより見える範囲に違いがある。金であれば相手のレベル、最大MP量、MP残量の全てを見ることができるが、銀ではレベルと最大MP量だけ、といった具合にだ。ちなみに銅だとレベルも大雑把にしかわからないらしい。らしいというのは塔の試練を受けていないミモザには詳細がわからないからだ。でもゲームでは確か最初に難易度の選択が可能で、イージーでは金、ノーマルでは銀、ハードでは銅に最初の試練の塔で与えられる祝福は設定される仕様であった。
そしてゲームの中のミモザは銅であった。
つまり自動的にハードモードのゲームが開始する予定である。今のところ。
(悲しい……)
内心でぼやきながらも次々と襲いくる雷撃を避け続ける。そうしながらメイスをさりげなく地面へと叩きつけた。
「……ちっ」
ロランが舌打ちをして横へと飛ぶ。メイスからの衝撃波が地面を走りロランの足元まで亀裂を生じさせたのだ。その体勢を崩した隙をゴーヤ逃さずミモザは棘を伸ばした。
伸ばした棘がロランの目にささるーーと、思われた直前に彼は胴体をそらせてそれを避ける。棘は残念ながら、彼の目の下あたりを少し引っ掻くだけで終わった。
「小娘が……、狡い真似を」
悔しそうな顔を作った後で、しかし彼は再びニヤッと笑う。
「先ほどから攻撃が単調でみみっちいのう。お主、もしや属性攻撃が使えんのか?」
「はい」
間髪入れずにミモザは頷いた。
属性攻撃というのはロランのしたような雷など特徴的な攻撃のことである。これは大抵の人は1つは属性を持っているものであり、2つ以上あれば天才と呼ばれる部類のものだ。つまり属性攻撃を持たないというのは『落ちこぼれ』ということである。
しかしミモザはそれがどうした、という顔をしてみせる。
(それがどうした!)
ふん、と鼻息荒く胸を逸らして見せた。
「………うん、そうか、なんかすまんかったな」
おそらく挑発しただけのつもりだったのだろう。なんか同情されてしまった。
ちなみに名誉のために言っておくがこれは半分嘘で半分本当だ。
元々ミモザは属性攻撃を持っていなかったが、狂化により一つだけ目覚めた。
しかしそれはあまり強力なものではなかったのである。
「あ、ちょっと本気で悲しくなってきた」
「まぁ、世の中そういうこともあるわい。才能とは無慈悲なものじゃ」
「同情ついでに見逃しませんか」
一応聞いてみた。
「それは無理じゃ」
即答の上で更に雷撃を叩き込まれた。ミモザは避けた。
。クロムゴーヤアントシアニンの効果dha epa dha
宿屋のベッド亜鉛 の サプリ
宿屋のベッドに腰掛けて、アベルは待っていクロムた。
先日の強制捜査の後、亜鉛二人はさらに郊外の宿屋へと場所を移していた。昨夜チェックインした部屋に、朝起きたらアベル一人しかいなかったのだ。ステラがどこに行ったのかはわからないが、闇雲に探し回ってすれ違う事態は避けたかった。
階段亜鉛 サプリ おすすめを登ってくる足音がする。それに弾かれたように彼は立ち上がった。
「アベル!」
扉が開くと共にアベルの待ち人は彼を呼んだ。そしてそのまま捲し立てるように話し出す。
「おかしいわ。前回はこんなことなかったの。あの飴が取り締まられるだなんて……」
「ステラ!」
アベルは険しい顔でその発言を遮った。そのまま部屋に入ってきた少女ーーステラの両肩を掴む亜鉛。
「約束してくれ、ああいう怪しい薬には今後手を出さないと」
「え?」
きょとん、と彼女はそのサファイアの瞳をまんまるくした。そのわかっていない様子にアベルは眉間に皺を寄せ、訴えかけるように説明する。
「今回はギリギリだった。下手したら捕まってたんだ」
「ありがとう。アベルのおかげで助かったわ」
アベルはミモザに会った際にステラが検挙される危険性を感じ取っていた。そのため強制捜査の直前にアベルは飴を持ち出すと粉々に砕き、地面に埋めていたのだ。
捜査官が来る前に始末できたのはただ単に運が良かっただけクロムだ。あとほんの数刻アベルの行動が遅ければ今頃ステラは逮捕されていたことだろう。
その重大さがわかっていない様子の少女の態度に、アベルは苛立たしげに首を振った。
「俺も万能じゃない。常にかばってやれるわけじゃないんだ」
「ミモザのせいよ」
ステラは迷いなく言う。
「前はこんなことなかったもの。あの飴を使ってたって警察が押しかけてくることなんてなかった。今確かめてきたけど、売っていたお兄さんも捕まっちゃったんですって。ただ販売していただけなのに……」
「ステラ!」
アベルは首を振る。
「それは犯罪行為だからだ。あれは使用を禁じられている魔薬で……」
「でも前回は大丈夫だったのよ?」
何も伝わっていない様子で可愛らしく小首を傾げるステラに、
「前回なんマカて知らねぇよ!!」
アベルはとうとう我慢できずに怒鳴ってしまった。アベルの顔が泣きそうに歪む。どうしたら伝わるのかがわからない。
「頼むから今を見てくれ! ステラ!!」
ステラが黙り込む。はぁはぁと肩で息をするアベルの呼吸だけが室内に響いた。
「……どうしてわかってくれないの」
「ステラ……?」
アベルの手を振り払って、ステラは彼を睨んだ。
サファイアの瞳が怒りに輝く。
「前回はわたしのやる事は正しいって、そうあるべきだって、言ってくれたのに……っ」
「ステラ……」
アベルは払われた手を見る。それをもう一度彼女に伸ばそうとして、躊躇した。
「それは誰なんだ? ステラ……」
「え?」
アベルはステラの目を見る。ステラもアベルの目を見た。彼の金色の瞳に涙の滴が溜まって落ちる。
「今の俺の話を聞いてくれよ……」
「………っ」
ステラは踵を返して扉へと向かう。
「ステラっ!」
「来ないで……っ!!」
強い拒絶の言マカ と は葉に、アベルはその背中を追うことができなかった。
(どうして? どうしてよ!)
ステラは走る。
(前回も今回も、どっちもアベルはアベルでしょ!?)
理解できない。理解してもらえない。
(なのにどうしてあんなことを言うの……っ!!)
息が苦しくなって、ステラは足を止めた。息を整えながら立ち尽くす。
あたりはもうすっかり夜の闇に覆われていた。
幸いにも祝福のおかげで周囲は問題なく見通すことができた。王都のはずれの方まで走ってきてしまったらしい。道の舗装は甘く、この先は森に続いているのか店もなく閑散としている。
「ミモザさん?」
ふいに声が響いた。今一番聞きたくなかった名前で呼ばれて勢いよく振り返る。そこには、
「ジーンくん……」
彼はそれがミモザではなくステラであることに気づいて、声をかけてしまったことを後悔するように顔を歪めた。
「ステラさんでしたか。これは失礼を」
そう言って彼が足早に立ち去ろうとするのを、
「待って!」
ステラは呼び止めた。
「ジーンくん! ジーンくんはわかってくれるわよね? わたしのこと可愛いって、好きだって言ってくれたもんね?」
亜鉛の効果 ステラのそのすがるような呼びかけにジーンは答えない。その背中にステラはなおも話しかけ続ける。
「これ、買ってくれたネックレスつけてるの! ねぇ、ジーンくん……」
「僕は、貴方のお人形ではありませんよ」
そこでやっと諦めたようにジーンは振り向いた。その表情は、険しい。
「……え?」
「他の人もそうです。貴方の望む答えを返すだけの人形じゃない。みんなそれぞれ考えがあって、大切なものがある。それを無理やり薬で歪めるような行為は最低です」
黒い黒曜石の瞳が糾弾するようにステラのことをねめつける。その強さにステラはたじろいだ。
「ど、どうして……」
「どうして? わかるでしょう。貴方は騙し打ちで薬を盛られて許せるのですか?」
「それは、間違いを直そうと……」
「間違い? なんですかそれは?」
ステラは必死に説得しようと言葉を紡いだ。
「前回と違ったから、同じにしようと思ったのよ。だって前回はそれで全部うまくいったの。みんな幸せそうで……」
そう、幸せだった。みんなステラのことを認めてくれて、好いてくれて、否定したりしなかった。思い出して思わず笑みが溢れる。それは蜜のように甘美な記憶だった。
「その『前回』というのが僕にはわかりませんが……」
その回想を引き裂くように、ジーンはふぅ、とため息をつく。
「その『前回』とやらも、貴方ゴーヤ チャンプルーが思っているほど良いものではなかったのではないですか?」
「……え?」
見ると彼は冷めた目をしてステラを睨んでいた。
「『前回』も、貴方の独りよがりだったのではないですかね? 僕にはわかりませんが、しかし貴方のような自分の気持ちに固執される方が、誰かを幸せにできるとは僕には思えない」
「………っ!!」
ステラは息を呑んだ。目の前が真っ赤に染まる。
許せなかった。
ステラの思いを、大切な思い出を汚された。怒りに頭が熱くなる。
「ニィー」
ティアラが鳴く。
「そうね、ティアラ」
ステラは頷いてティアラをレイピアへと変えた。
ティアラは「思い通りにいかない奴は殺してしまおう」と言った。
黒い塵がぶわりと吹き上がる。ステラとティアラの周囲がどす黒く染まる。
「ステラさん、貴方は……っ!」
ジーンは引き攣った顔で守護精霊を剣に変えて構えた。
「わたしは間違ってないの」
その瞳は、紅く紅く染まっていた。
「間違っているのは、この世界の方よ」
氷の破片を次々と放つ。ジーンはそれを土の壁で防いだ。しかし無駄だ。
そうしている間に、光の弾のチャージが終わる。
光線銃の光の帯が、土の壁を消し飛ばした。すかさずステラは氷を放つ。
「………くっ!」
「わたしが直すわ!」
地面が盛り上がりステラに襲いかかる。しかしそれをステラはすべて凍らせた。ジーンが驚いたように目を見開く。
(何を驚いているのかしら?)
ポリ ペプチドそれにステラは首を傾げる。彼女は一度受けた攻撃を忘れたりしない。二度も同じ手に引っかかるほど馬鹿でも間抜けでもない。
光のチャージが終わる。
「しま……っ!」
驚いて、隙を見せたのがジーンの敗因だ。
光の帯はジーンの剣を弾き飛ばした。その衝撃で彼自身の身体も吹き飛ばされ、地面にもんどりうつ。
「…………」
ステラはレイピアを握ったまま、ゆっくりとジーンへと近づいた。どうやら気絶しているようだ。
彼に触ろうとして、ふと、彼女は何かに気づいた。
少しの間の後、その唇が笑みに吊り上がる。
「……ふ、ふふ、ふふふふふふ」
それは天啓だった。自らに宿った新たな力に、ステラは歓喜する。
「ほらやっぱり、わたしは間違ってなかった」
レイピアの姿のまま、ティアラはそれに同意した。
。亜鉛の効果サプリメント マカクロムの効能マカ と は
しかし突きマカ と は
しかし突き飛ばされた場所が悪かった。彼は起きあがdha epa dhaろゴーヤうとして地面に手をつき、その手が地面に飲み込まれた。
「………っ!?」
草に隠れてよく見えないが、そこは沼であった。この第4の塔はところどころにわかりにくい沼が広がっており、歩ける地面はちゃんと目で見ればわかるようアントシアニンにはなっているものの、よく注意していないと足を踏み外してしまう危険がある。野良精霊に襲われたり、転んだら最後、底なし沼から自力で這い出るのは困難である。
「捕まって!」
ステラとマシューは駆け寄るとその手を掴んで引っ張り上げた。ずるり、と泥まみれの男の子が沼から引きずり出される。
「大丈夫か?」
マシューが尋ねると堰を切ったように少年は大声を出して泣き出ポリ ペプチドした。そのままぐずぐずと話し始める。
いわく、今のは学校のクラスメイトであること、
いわく、いじめられていること
いわく、無理矢理連れてこられて突き飛ばされたこと
「……ひどい」
ステラは表情を曇らせる。
「下手をしたら生死に関わるな」
マシューも難しい顔でつぶやいた。
ここは第4の塔である。野良精霊も出現する塔だ。
「……教会騎士の管理はどうなっているのかしら。こんな子を中に通すだなんて、万が一があったら……。いじめも見抜けないだなんてやっぱり管理方法はもっと厳重にするべきだわ」
ステラは憤然と言った。それにマシューは困ったようアントシアニンに眉をさげる。
「いじめかどうかの判断は難しいよ。本人達が違うと言ったら、資格を満たしていた場合は塔に受け入れざるを得ない」
「でも塔は危険な場所なのよ? ここがあるせいでただのいじめが殺人になってしまうかも知れない! ちゃんと抗議しなきゃ!」
「ちょ、ちょっと!」
そのまま出入り口を管理する騎士に突撃しようとするステラをマシューは慌てて腕を掴んで止めた。
「まずは男の子に怪我がないか確認させてくれ!」
そう言ってマシューは男の子の全身を確認すると、小さな擦り傷を見つけてそこに手を当てた。
柔らかい光がじんわりと灯って傷が早送りのように綺麗に塞がる。
「大丈夫かい? 他に怪我は?」
「だ、だいじょうぶ……」
「そうか、大変だったな」
なんとか泣き止んだ泥まみれの少年をよしよしと自身が汚マカれるのも厭わずにマシューは撫でる。少年の目はその優しさに再びうるみ始める。
「あ、あー…、うちには帰れそうか? 送っていくか?」
「ひぐっ、か、帰れるぅ」
「じゃあ入り口まで一緒に行こうか」
3人で時々少年の泥を落としてやりつつ出入り口へと近づくと、入場管理をしている騎士の中で若い騎士がその様子に気づいて走り寄ってきた。
「どうされました? 救助は必要ですか?」
「もう怪我は治したから問題ないよ、でも事件として報告をあげてもらいたい」
事件、の言葉に彼は息を呑む。
試練の塔の内部では原則利用者同士の揉め事は御法度である。事件というのは野良精霊や試練による負傷以外の人為的な被害を意味していた。
マシューが詳しく報告をしようと口を開くと「そうなの!」と元気よくステラが先に言葉を放った。
「この子、学校のクラスメイトにいじめでここに連れてこられて沼に突き飛ばされたのよ! 今回はたまたまわたし達が見ていたから良かったけど、そうじゃなければ今ごろ命に関わってたかも知れない! どうしてこの子達のこと亜鉛を中へ通したの? 怪しいとは思わなかった?」
「どうしてって……、その、明確な理由がないと拒むことはできませんので……」
若い騎士は戸惑うように言葉を濁す。それにステラはむっと眉を寄せた。
「貴方達は問題意識が低いわ。塔の管理が甘いせいでただのいじめが殺人事件になるところだったのよ。危険な塔の管理を任されているんだから、それなりの……」
「ステラ!」
マシューが鋭く遮る。それに騎士はほっと息をついた。
「どうしたの? マシュー」
ステラはそれに訝しげに返す。マシューは呆れたように首を横に振った。
「どうしたのじゃないよ、彼を責めるのは筋違いだ」
その言葉にきょとんとして、少し考えた後にステラは頷いた。
「そうね、教会の管理体制の問題だもの。もっと上の立場の人に言うことよね」
「それはそうだけどそうじゃないよ」
ふぅ、とマシューは疲れたようにため息をつく。
「例えばの話だけどさ、今回はいじめに塔が使われたけど、彼らがこの子を川に放り込むことだってあり得たとは思わないかい? 誰にでも近づくことのできる川の管理が甘いとその地域の役所を責めるのはちょっと無理があるだろう? 今回のもそれと同じだよ。悪いのはいじめというイレギュラーな行動をするクロム連中で教会騎士にすべての問題の検出は不可能だ。そりゃあ
川に柵を立てたりはできるだろうけどそういう奴らは柵を乗り越えて同じことをするだろう。今回のは事故じゃなくて事件だからね。報告して改善策は練った方がいいだろうけどそんなに喧嘩腰で言うようなことじゃない」
「……っ、でも!」
「君が今回の件を真剣に考えてくれているのはわかるよ」
マシューはなだめるように笑いかける。
「けど一つのことにこだわり過ぎて他の人の都合に盲目になるのはよくない。……まぁ、俺が言えたことじゃないんだけど」
「……ミモザみたいなことを言うのね」
ステラの言葉に彼は「うっ」とうめいて胸を押さえた。
「ま、まぁ、受け売りなのは否定しないよ。あんな残酷に人のメンタルをえぐる奴にあんまり感謝はしたくないけど、まぁ、いっぺん精神的にぶん殴られたおかげで視野は広がったよね……」
ああ、あの時の騎士団の人間はこういう気持ちだったのかなぁ、とマシューはうつろな目でステラにはよくわからないことをぶつぶつとつぶやく。
「どうして……」
ステラはそんな彼を呆然と見つめた。頭の中で『何か』がおかしいと騒ぐ。
おかしい。村ではみんなステラに同意してくれたのに。おかしい。ミモザの言うことばかり優先されるなんて。おかしい。アベルがステラのことを否定するなんて。おかしい。マシューがステラの言葉を受けdha epa入れないなんて。
おかしい。
(前はこう言えば喜んでくれたじゃない)
そこまで考えてステラははっと我にかえる。
(『前』ってなに?)
頭がずきずきと痛む。マシューとはこれが初対面のはずだ。
「ステラ?」
頭を押さえて黙り込むステラに、マシューは不審げに声をかけた。
「頭が痛むのか? どこかにぶつけた?」
「……いいえ、なんでもないの」
ステラはにっこりと笑う。本当はなんでもなくなんてない。ステラは傷ついている。マシューが裏切ったからだ。
(裏切るってなに?)
「ちょっとめまいがしただけなの。この後に用事があったのを思い出したわ。あとは任せてもいいかしら?」
「え? あ、ああ、大丈夫だよ。お大事に」
ステラは少年とマシューに微笑みかけ、ついでに若い騎士を見た。彼はその視線に嫌そうに身をすくめる。
(わたしが悪いみたいな顔をしないでよ)
不愉快な気持ちがステラの中で渦巻く。けれどそれ以上は何も言わずに立ち去ることをステラは選択した。
これ以上今のマシューと言葉を交わしたくはなかった。
。ゴーヤ亜鉛 の サプリ亜鉛 サプリ亜鉛
「そんなこ亜鉛
「そんなことよりも問題は! わたくしの可愛い弟子がその被害に遭っているこマカと! そしてその魔薬の流出経路です!!」
そのくだらないやり取ゴーヤりを引き裂くように、燦然と輝く銀の髪を振り乱し、フレイヤは手を腰に当ててずいっとオルタンシアに詰め寄った。
豊かな胸がずずいっと目の前の視界を圧迫するゴーヤ チャンプルー。
「う、うん、わかっていますよ、もちろん。フレイヤくん」
その勢いと威圧と視線の向きによってはセクハラに当たらないかの心配で、額ににじんだ汗を拭き拭きオルタンシアは同意する。巷ではナイスミドルと評判の教皇も王国騎士団団長、否、怒れる美女にはかたなしだ。
「あー……、その流出経路についてだが」
ガブリエルがそんな上司にアントシアニンの効果助け舟を出すように口を挟んだ。
「フレイヤも知っていると思うが、おそらく近頃噂の『黒い密売人』が本命だな」
「黒い密売人」
思わずオウム返しにミモザは真似をする。なんだか意味がありそうでなさそうな名称だ。
そんなミモザには構わず、ガブリエルは資料を取り出して机の上へと並べた。見ると王都の地図に赤い印がついているものや人相書きなどがある。そこに描かれている特徴は黒いローブに身を包んだ背が高く黒髪長髪の男とあり、なるほど黒という要素がふんだんに盛り込まれていた。
「この男の目撃情報は主に夕刻から深夜、裏クロム路地や街の郊外などの人気のない場所が多い。何回か接触を試みたがほぼすべて空振りでこれらの情報のほとんどは魔薬の購入者からの聴取によるものだ」
「接触できなかったのか?」
訝しげなレオンハルトの問いにガブリエルは頷く。
「覆面警官による待ち伏せはすべて空振り。購入者の協力を得てその周辺で待機していてもその時に限って現れねぇ。囮捜査で若い女性警官をうろつかせてもまるで気配も現さねぇ。一応、一回だけ接触に成功したことはあったんだが……」
そこでガブリエルはわずかに言い淀んだ。
「捜査員が独断専行で一人で行ったんだ。翌日、重症で発見された。もう少し発見が遅れていれば命はなかっただろう」
ミモザは息を呑む。その捜査員の技量はわからないが素人ではないことは確かだ。それを相手取って重症を負わせるなど生半可な腕亜鉛 サプリではない。
「つまり、周囲で他の人間が見張っていると現れないということか」
「ああ、その通りだ。どうやって察知してるのかは知らねぇけどな」
レオンハルトの言葉にガブリエルは頷いた。その表情は苦々しく悔しそうだ。
(もしかしたら重症を負った捜査員はガブリエル様と親しい仲だったのかも知れない)
そう思わせるような態度だった。
「一応、わたくしも囮として過去に出没報告のあった場所に一人で立って見たんだけどね」
フレイヤも険しい顔で言う。
「現れなかったわ。おそらくわたくしの顔を知っているんだと思う」
「用心深いことですね」
オルタンシアは嘆息する。
つまりその黒い密売人は見張りがいると現れず、見張りがいなくても騎士団の者だとわかる場合は現れないということだ。
「あと、情報としてはその被害にあった捜査員が言うには異常に自身の強さを誇示していたらしい」
「はぁ?」
ガブリエルの提供した情報にフレイヤは不愉快げに声を上げた。
「散々逃げ回っておいて何よそれ。それならわたくしの前に姿を見せなさいよ!」
「どうどう、ゴーヤ チャンプルー俺にキレたって仕方ねぇだろ」
フレイヤの怒りに反応してか守護精霊のクワガタも威嚇してツノをガチガチと鳴らす。今にもガブリエルの首を絞めあげそうな勢いだ。彼はとんだとばっちりである。
「どうしましょうか」
それを無視してレオンハルトはオルタンシアに問いかけた。
「そうですねぇ」
思案するように彼は視線を動かし、ミモザに目をとめた。それは一見偶然ミモザを見たとも思える動きだったが、どうにも演技のようにも見える仕草でもあった。
彼はにこりと穏やかに笑う。
「ミモザくん、君にお願いできますか?」
「……僕ですか?」
「オルタンシア様、それは……っ」
否定しようとするレオンハルトを手で制し、彼は「彼女が適任です」と静かに告げる。
「ここまでの情報で、ミモザくんの双子のステラくんとやらが顧客なのは明らかです。そして今ここには彼女にそっくりなミモザくんがいる」
オルタンシアの肩におそらく彼の守護精霊であろう鮮やかな青色のイグアナがのそのそと姿を現した。彼は主人にそっくりなそのすみれ色の瞳でミモザをゆったりと見つめた。
「きっと黒い密売人はミモザくんのことをいつもの常連と間違えて姿を現すことでしょゴーヤ チャンプルーう」
「……っ、危険すぎます」
「彼女は君の弟子でしょう。弟子の技量を信じられないのですか?」
「それは……っ」
どこまでも冷静な瞳にレオンハルトはそれ以上なにも言えずに押し黙った。それにオルタンシアは満足そうに頷くと、ミモザのことを再度見つめた。
「ミモザくん、引き受けていただけますか?」
それは疑問の形を取ってはいるが、レオンハルトが反論を諦めた時点で確定事項のようなものだ。
「わかりました。お引き受けいたします」
ミモザにはそれ以外の返事は許されなかった。
「ミモザ」
教会からの帰路で、レオンハルトは雑貨屋によると何かを購入した。筒状で下から紐の飛び出したそれをミモザへと寄越す。
「なんですか? これ」
「信号弾だ」
首を傾げるミモザにレオンハルトは静かに告げる。
「いいか、ミモザ。取り逃がしてもいい、致命的になる前にすぐにこれを使いなさい。そうしたら俺は必ず駆けつける」
ミモザはレオンハルトの顔と信号弾を交互に何度か見た末、それをありがたく受け取った。
「これがあれば百人力ですね」
わざと茶化すようにそう言うと、彼は少しむっと眉を寄せた後、諦めたように笑った。
「油断するなよ」
「はい!」
ミモザは信号弾を両手で優しくぎゅっと握る。
この事件はミモザ個人としてもなんとかして収めなければならなかった。
無論、ステラに味方する人物をなるべく増やさないためである。
。亜鉛の効果ポリ ペプチドクロムの効能亜鉛
「んーー…」 メ亜鉛
「んーー…」
メモ帳を片手に首を傾げる亜鉛 の サプリミモザの足元には、おびただアントシアニンの効果しい量の野良精霊の遺体が散乱していた。
あれから数刻ほどの時間が経過していた。その間延々と野良精霊を狩り続け、ミモザはある程度チロの扱い方を習得しつつあった。
とはいえそれはゲームの中の『ミモザ』が使っていた技術をアントシアニンの効果なんとかおさらいし終えた、という程度のものでしかないが。
記憶の中で把握した技術を書き出したメモ帳に、実際に行えたものはチェックをつけていく。
達成率は50%といったところだ。
「まぁ、初日だしこんなものか」
メモ帳を閉じ、手とチロについた血を振り払う。ふと思いついてかがむと野良精霊の遺体に手を伸ばした。
その白魚のような細い指先で遺体を容赦なく探ると、ミモザはそこサプリメント マカから白い結晶を取り出した。
「お小遣い稼ぎ程度にはなるかな」
それは魔導石である。
ゲームでも野良精霊を倒すとドロップし、売ることでお金稼ぎができるシステムだった。
そう、魔導石の正体は精霊の核である。今市場に出回っている物はこうして野良精霊を狩って手に入れた物や、もしくは墓を建てるという文化すらなかった太古の時代にあちらこちらに埋められたり遺棄されていたのであろう守護精霊の物を発掘した物であった。
「皮肉な話だなぁ」
悪質であると禁じられている守護精霊を切り捨てるという行為。しかしこれにより野良精霊が発生し今は貴重なエネルギー源となっているマカ サプリ。生活を便利にするためにあらゆる場所で魔導石が用いられている現在において消費される量はすさまじく、『過去の遺産』は確実にいずれ枯渇するだろう。今生きている人の守護精霊も死ねば魔導石として利用されることになるとはいえ、毎日の人が死ぬ量よりも魔導石の消費のほうが上回っている以上それは避けられない現実であった。それでも国と教会が守護精霊の切り捨てを禁じるのはその捨てられた精霊の種類によってどのような生態系の変化、あるいは突然変異が生まれるかが予測できないからだ。しかし野良精霊をエネルギー量確保のために養殖するという考えは宗教的、倫理的観念から現状では難しい。
結局のところ、今いる野良精霊達を絶滅させず、人に危害が加えられない程度の数に抑えながら自然環境の中で保存し適宜必要量を採クロムの効能取するという、いうなれば放し飼いでの養殖のような形で今は落ち着いている。
この森の中は法律上野良精霊を狩って良いエリアである。特例はあるが一般的に一人が一日に狩っても良い野良精霊の数は20匹まで。
ミモザが今狩ったのは16匹。全く問題ない範囲である。
遺体の中からきっちり16個の魔導石を回収し、ミモザは立ち上がった。
日は少しづつ傾き、西の空が赤色に染まり始めている。
さて、暗くなる前に帰ろうとしたところで、
「それは、狂化しているのかい?」
そこで初めてミモザは人に見られていたことに気がついた。
。ゴーヤクロム
最初に奪われたの亜鉛 サプリ
最初に奪われたのは髪だった。
双子ゆえに全くのマカ瓜二つだクロムの効能ったミモザとステラを見分けるために髪型を変えてはどうかと最初に言い出したのは一体誰だったか。当時幼かったミモザにはさっぱり思い出せないが、大声で泣き喚いて「絶対に髪を切りたく亜鉛 の サプリない」と騒ぐ姉を前に、母が困ったように笑い「ミモザはどう?」と聞かれてただ頷くことしかできなかったことは今でも鮮やかに思い出せる。
次は色だ。
可愛いオレンジ色のワンピース。お気に入りだったのにいつの頃からかそれはステラのものということになっていた。双子ゆえに服はいつもシェアだった。髪を切る前まではミモザもピンクや黄色、赤といった明るい色をよく着ていたのにいつの頃から亜鉛の効果かミモザがその色の服を着ているとそれは奇妙なことだと思われるようになった。「お姉ちゃんの真似をしているの?」と聞かれることやステラにはっきりと「それはわたしのだよ、ミモザはこっち」と黒い服を渡されたこともある。
その派生で可愛らしい装飾のついたものも奪われた。
フリルやレースのついたものは当たり前のようにステラにあてがわれた。ミモザに与えられるのはシンプルなものやズボンばかり。いつのまにかミモザはボーイッシュな女の子に仕立て上げられていた。
その頃にはミモザは亜鉛 の サプリもう何も言えなくなってしまっていた。もともと姉よりも大人しく引っ込み思案な子どもだった。けれど自分も可愛い格好がしたいと勇気を振り絞って訴えても実際に着てみても、微妙な顔で笑われたり「お姉ちゃんの真似」と言われたりするたびに、もはや何もしたくなくなってしまっていた。
姉に言ってもそれこそ暖簾に腕押しだ。虚しいばかりで得るものは何もない。
どんどん口が重たくなるミモザに友人達は離れていってしまった。そうしてステラはミモザに言うのだ。
「大丈夫よ、ミモザ。ミモザももっと頑張れば、絶対お姉ちゃんみたいになれるから」
一体誰がステラみたいになりたいだなんて一度でも言ったというのか。
周囲も言う。
「いつかミモザもステラみたいに明るく話せるようになれればいいね」
ミモザはゴーヤステラになど憧れてはいない。
きっとその周囲の言葉にミモザも笑って「そうだね、いつかステラみたいになりたいな」と返せればよかった。そうすれば周りは納得したのだろう。
けれどミモザは頷けなかったのだ。
*
ミモザは愕然とした。
それはなけなしの勇気を振り絞って「僕、いじめられてるんだ」と告白したミモザに彼女の美しい双子の姉が「あら、そんな強い言葉を使うものじゃないわ、ミモザ。きっと気のせいよ。大丈夫、お姉ちゃんがちゃんと仲直りさせてあげるからね」などとなんとも天然を通り越した唐変木な返事を返したからーーではない。
(頭がちかちかする)
豊かなハニーブロンドの髪に青い瞳をした、まるでビスクドールのように美しい少女が目の前にいる。
「ミモザ?」
学校へと向かう通学路。ミモザが立ち止まったことに姉が怪訝そうに振り返る。
その姿は一枚の絵画のように美しく、薔薇色に上気した頬は少女らしいあどけなアントシアニンの効果さを宿して愛らしい。
姉、いやちがう、彼女はステラ。いや、そうだ、ステラは確かにミモザの姉だ。なんでもミモザよりも上手にできる姉。人気者の姉。わがままで気まぐれで、しかしそれすらも魅力的な少女。
(そしてこの世界の主人公)
心配そうにこちらを覗き込む瞳の中に、目の前の少女と髪型以外は瓜二つのショートカットの少女が映る。
「…それってなんて地獄?」
「え?」
鏡写しのようにそっくりな2人の少女は立ち止まって見つめ合った。
1人は怪訝そうに、けれど微笑んで。
もう1人は絶望に真っ青に顔を染めて。
それはミモザが自分がこの世界の主人公である姉『ステラ』の引き立て役である『出来の悪い双子の妹』であることを思い出してしまった瞬間であった。
この世界は女性向けの恋愛要素ありのrpgゲームである。
いきなり降って湧いた記憶の中でミモザは1人の女だった。年齢も立場もわからない。わかるのは性別とおそらく成人しているであろうという朧げな記憶だけだ。
それとゲームが大好きでいろいろなゲームに手を出していたということだけ。
ゲームのタイトルも思い出せない。ストーリーも展開も朧げだが、はっきりdha epaとわかることもある。
このゲームの世界の人間は皆、守護精霊と共に生まれる。自身の分身である守護精霊はなんらかの動物に近い姿を取り、そして自身の生まれ持った性質や精神面の成長によってその姿や能力が変化する仕様である。
しかしたいていのものは物心がつく年齢にはその姿が定まり、能力も15歳ごろには完全に固定化されていく。
そして主人公の生まれ故郷であるアゼリア王国では精霊騎士と呼ばれる花形職業があり、主人公はその精霊騎士を目指して奮闘していくのである。
本来なら精霊騎士になるためには7つの塔の試練を受け、王都で開かれる大会に出場しそこで精霊騎士としてのランクとともに資格を授けられるのだが、もちろん、このゲームの世界でなんの面白みもなく試験が進むわけもなく、悪役の妨害や事件が起こる。
大きな事件としては野良精霊の暴走が起き、主人公であるステラは恋愛対象であるキャラ達とともにそれを鎮め、神聖であり最強を意味する『聖騎士』の称号を賜ることになる。
ちなみに主人公の前任の聖騎士も存在するが、物語の終盤あたりで主人公達を庇って死んでしまう。記憶によるとゲームの2周目ではその聖騎士ルートも解放されるという話があるらしいがミモザには全く思い出せなかった。
がらりと音を立てて教室のドアを開ける。
クdhaラスのみんなは一瞬ちらりと視線をよこしたが、それがミモザであるのを確認するとすぐに視線を戻しそれぞれの会話へと戻った。
シカトである。
ミモザははぁ、と半眼でため息をつくとのろのろと教室の自分の席へと着く。
ーーそして『ミモザ』は小さな妨害であり、主人公に付きまといその試練をことごとく邪魔して回るという嫌がらせキャラであり、主人公の優秀さを際立たせるためにことごとく試練に失敗するという当て馬キャラでもあった。
机の引き出しを開くと真っ赤なペンか何かで悪口が書かれた紙切れと刃物、ガラスの破片がバラバラと出てきた。
ちらり、とショートカットの割には長めの前髪に隠して視線を周囲に走らせる。
(……あいつだな)
気づいていないふりをしながらもミモザの引き出しから落ちたゴミを見てにやにやと笑う奴がいた。
このクラスのガキ大将でありイジメの主犯、アベルである。
短い藍色の髪に切長の目をしたなかなかに整った容貌をした少年は、なんとステラの恋愛候補キャラのうちの1人でありゲームのスタート時の15歳にはちょっと生意気だが共に精霊騎士を目指す幼馴染として善良ぶって登場したりする。
ゲームの中のミモザは闇堕ちをしていてステラや幼馴染達に執拗に嫌がらせを繰り返していた。
ミモザはぎゅっと握り拳を作る。
そうして天を降り仰いだ。
(いや、そりゃそうだろ!)
拳を机に叩きつけたい衝動をぐっと堪える。
ゲームをしていただけの前世のミdha epa dhaモザにはその理由がわからなかったが、『ミモザ』として約12年間生きてきた今の彼女にはその理由がものすごくよくわかる。
悪質ないじめ、優秀な姉と比較されて貶される日々、おまけに善良だが無神経な姉になけなしの勇気をもって助けを求めて返ってきた言葉が「きっと気のせいよ」である。「仲直りさせてあげる」である!
いやこれは気のせいじゃねぇよ、と目の前に積み上げられた罵声の書かれたゴミと危険物を前にほとほと呆れる。
仲違いしてんじゃねぇんだよ、一方的に暴行を受けてんだよ、こっちは。
欲しいのは仲直りではなく謝罪と今後一切の不可侵条約である。
ぐぎぎぎぎ、とミモザは主人公そっくりの愛らしい顔を歪めて歯軋りをした。
俯いているため長い前髪に隠されて見えないがその形相はさながら悪鬼そのものである。
その勢いで人も呪い殺せそうだ。
しかしその勢いでアベルに怒鳴りつけるなどという行為は彼女には到底できないのであった。
前世ともいうべき記憶を思い出したものの、どうやらミモザの人格はミモザのままだ。多少自身を客観視できているような気もするが、それでも与えられた恨みつらみはそのままであり性格はまごうことなき小心者のままである。
何もやり返すことのできない自分に歯噛みしつつ、ふと机の上に目を向けるとそこには白い鼠の姿をしたミモザの守護精霊、チロがその気持ちに同意するようにうんうんと頷いていた。
「チロ……っ」
(心の友よっ!)
ミモザは歓喜した。そうだ、自分にはチロがいるのだ。決して1人ではない。
例え相手が自分の分身というか半身であろうが1人ではないのだ。
1人ではないと思い込めば1人ではないのだ。
「チィー!」
チロが鳴く。
その目は亜鉛 サプリ紅く不気味に輝き『この教室にいる奴ら全員ぶっ殺してやろうぜ!』と言っていた。
「いやダメだろ!」
思わず真っ青になって立ち上がる。途端にクラス中の人の視線がミモザに突き刺さった。
「……ひっ」
気分はさながら蛇に睨まれた蛙である。顔どころが全身から血の気を引かせて周囲にある机や椅子にぶつかりひっかかりながらも、なんとかほうほうのていでミモザは教室から逃げ出した。
もはや授業などどうでも良かった。
悲報、自らの半身がすでに闇堕ちしてるっぽい。
この世界では闇堕ちした場合にはある外見的特徴が現れる。
一つは体から滲み出る魔力のオーラ。通常白く輝くはずのこれに黒い塵のようなものが混ざる。
そしてもう一つが紅く輝く瞳である。
この世界には紅い瞳の生物は存在しない。
そう、闇堕ちーー狂化と呼ばれる現象を起こした生物以外には。
さて、では改めてミモザの守護精霊であるチロを確認してみよう。
白く輝く毛並みに大きな耳。きゅるりとした本来なら可愛らしいはずの瞳は紅く輝き爛々と光っていた。小柄な体からはどす黒い塵のようなオーラが煌々と放たれている。
「チチィー」
鳴く声はどすがきいていていつもよりすごみがあった。
『なぜあいつらに報復しないのか?』その瞳はそう不思議そうに問いかけてきていた。
「………」
ミモザが閉口していると、ふいにめきょめきょと音を立てて『彼女』の背中が盛り上がり、それまでただの毛であった部分が鋭い棘となった。
その姿はただの鼠から立派な針鼠へと変化している。
闇堕ちしている、確実に。
(いや、いつから?)
少なくとも朝家を出た時はいつも通りだったはずだ。
(ということはー…)
先ほどの前世のものと思しき記憶。それを思い出したことによりチロの闇堕ちが本来より早まったのではないか。
(最悪だ)
普通こうdhaいう記憶を取り戻した場合は良い変化が起こるものなのではないのだろうか。ミモザの主観としてはゲームの設定よりも状況が悪化しているように思えてならない。
ミモザは両手にチロを乗せると恐る恐る問いかけた。
「チ、チロさん、ちょっと確認なんだけど」
「チチ」
「報復って具体的には」
「チ、」
チロはニヒルに微笑むとピッとサムズアップをしーー
「チチィ!」
それを勢いよく下に向けた。
「ダメだぁ!」
チロの殺意がとどまるところを知らない。
「そんなことしたら僕たち破滅しちゃうだろ!」
ミモザは半泣きで訴える。
そう、破滅。
『ミモザ』は物語の中盤であっさりと死ぬ役どころなのだった。
死因はまったく思い出せないが、きっと主人公に嫌がらせをした関係のあれやこれやに決まっている。
「いいか、チロ。僕たちにはアドバンテージがある」
言い聞かせるミモザにチロは同意するようにうんうんと頷く。
「まだあの『記憶』の信憑性はわからないけど、すさまじく現状とリンクしていることは確かだ。きっとこのまま何も考えずに進んでいれば、あの未来は起きかねないし僕は闇に呑まれて嫌がらせを繰り返すことになる可能性が高い」
というか確実にする。
現にチロは闇に呑まれかけているし、動機だけならことかかない。実際度胸があれば今だってやり返してやりたくてたまらない。
(けどできない!)
度胸がないからである。
大事なことだからもう一度。
度胸がない小心者だからである!
「つまり、今の僕たちがまずすべきこと、それはー」
ミモザは懐から一冊の本を取り出した。
そこに書かれたタイトルはずばり『初心者にもできる!呪術入門!』。
「彼らに不幸が訪れるように呪うことだ!」
その本をまるで救世主かのようにかかげてみせるミモザをチロは白けた目で見た。
そして針で刺した。
「いった!いたたたたた!痛い!やめて!」
「チゥー」
野太い声で恫喝するようにチロは告げる。
ふざけるな、と。
「いや別にふざけてないし僕は本気で、あ、ごめんなさい、痛い!ほんと痛いから!」サプリメント マカ
針で刺すだけでは飽き足らず噛みつき始めたチロにミモザは慌てて取り出した本を懐へと戻した。
「……さて、とりあえずどうしようかな!」
仕切り直しだ。チロが怒るので改めて考え始める。正直先ほどの案がミモザのできる最善策だと思うのだが、それを言うとチロがまた怒ってしまうのが明白なので黙って考えを改める。
「どう、したいかな」
思案するように呟く。
これからの行動を考える上で、それがおそらく一番重要だ。
このままゲームの通りにいけば破滅。けれどじゃあ報復もせずにただ指を咥えて黙って見ているのか。
(いじめっ子と妬ましい姉がなんの苦労もなく英雄になっていく様を?)
「僕はこのままは嫌だ」
チロを見る。彼女も同意するように頷いていた。
それは嫌だった。
(我ながら、性格が悪い)
嫌いな人達がより幸せになっていく様を見たくないだなんて。
その時、ふとゲームの中の一場面を思い出した。それはゲームの中で唯一ミモザが褒められるシーンだ。
『君は精霊との親和性が非常に高いのだね。それは精霊騎士を目指す上ではとても素晴らしい才能だ。大事にするといい』
姉のステラが聖騎士になる前の前任者、つまり現在の聖騎士である人がミモザのことをそう褒めるのだ。
のちにこの『精霊との親和性』というのは精霊とのつながりが深いという意味であり、勿論高ければ高いほど精霊騎士としての強さにつながるが、その一方で精霊が狂化してしまった際にその影響を非常に受けやすく、暴走しやすいというブラフだったことが明かされるのだがそれはそれとして。
ミモザがゲーム内で唯一評価されたのは『精霊騎士としての才能』であったのだ。
チロとの親和性。それだけは現状の最高峰である聖騎士に認められるほど高いのである。
その他はコミュニケーション能力も頭脳も他の諸々の何もかもが姉には敵わない。
チロとの信頼関係、それだけがミモザの財産でよすがだ。
「……奪ってやろうか」
それが例え一つだけでも。
友人も恋人も英雄の称号も他の何も奪えなくても。
精霊騎士としての強さ、それだけは。
「お姉ちゃんより強くなって、面子潰してやろうか」
一度だけでもいい。いやどうせなら、
「聖騎士の立場、もらおうか」
ミモザのそのマカ思い詰めたような仄暗い囁きに、チロは目を紅色にギラギラと光らせ一声鳴いた。
それは紛れもない同意の声だった。
。マカ と はサプリメント マカdhaサプリメント マカゴーヤ チャンプルー
最初に奪われた亜鉛
最初に奪われたのは髪だった。
双子ゆdhaクロムえに全くの瓜二つだったミモザとステラを見分けるために髪型を変えてはどうかと最初に言い出したのは一体誰だったか。当時幼かったミモザにはさっぱり思い出dha epaせないが、大声で泣き喚いて「絶対に髪を切りたくない」と騒ぐ姉を前に、母が困ったように笑い「ミモザはどう?」と聞かれてただ頷くことしかできなかったことは今でも鮮やかに思い出せる。
次は色だ。
可愛いオレンジ色のワンピース。お気に入りだったのにいつの頃からかそれはステラのものということになっていた。双子ゆえに服はいつもシェdha epaアだった。髪を切る前まではミモザもピンクや黄色、赤といった明るい色をよく着ていたのにいつの頃からかミモザがその色の服を着ているとそれは奇妙なことだと思われるようになった。「お姉ちゃんの真似をしているの?」と聞かれることやステラにはっきりと「それはわたしのだよ、ミモザはこっち」と黒い服を渡されたこともある。
その派生で可愛らしい装飾のついたものも奪われた。
フリルやレースのついたものは当たり前のようにステラにあてがわれた。ミモザに与えられるのはシンプルなものやマカ サプリズボンばかり。いつのまにかミモザはボーイッシュな女の子に仕立て上げられていた。
その頃にはミモザはもう何も言えなくなってしまっていた。もともと姉よりも大人しく引っ込み思案な子どもだった。けれど自分も可愛い格好がしたいと勇気を振り絞って訴えても実際に着てみても、微妙な顔で笑われたり「お姉ちゃんの真似」と言われたりするたびに、もはや何もしたくなくなってしまっていた。
姉に言ってもそれこそ暖簾に腕押しだ。虚しいばかりで得るものは何もない。
どんどん口が重たくなるミモザに友人達は離れていってしまった。そうしてステラはミモザに言うのだ。
「大丈夫よ、ミモザ。ミモザももっと頑張れば、絶対お姉ちゃんみたいになれるから」
一体誰が亜鉛 の サプリステラみたいになりたいだなんて一度でも言ったというのか。
周囲も言う。
「いつかミモザもステラみたいに明るく話せるようになれればいいね」
ミモザはステラになど憧れてはいない。
きっとその周囲の言葉にミモザも笑って「そうだね、いつかステラみたいになりたいな」と返せればよかった。そうすれば周りは納得したのだろう。
けれどミモザは頷けなかったのだ。
*
ミモザは愕然とした。
それはなけなしの勇気を振り絞って「僕、いじめられてるんだ」と告白したミモザに彼女の美しい双子の姉が「あら、そんな強い言葉を使うものじゃないわ、ミモザ。きっと気のせいよ。大丈夫、お姉ちゃんがちゃんと仲直りさせてあげるからね」などとなんとも天然を通り越した唐変木な返事を返したからーーではない。
(頭がちかちかする)
豊かなハニーブロンドの髪に青い瞳をした、まるでビスクドールのように美しい少女が目の亜鉛前にいる。
「ミモザ?」
学校へと向かう通学路。ミモザが立ち止まったことに姉が怪訝そうに振り返る。
その姿は一枚の絵画のように美しく、薔薇色に上気した頬は少女らしいあどけなさを宿して愛らしい。
姉、いやちがう、彼女はステラ。いや、そうだ、ステラは確かにミモザの姉だ。なんでもミモザよりも上手にできる姉。人気者の姉。わがままで気まぐれで、しかしそれすらも魅力的な少女。
(そしてこの世界の主人公)
心配そうにこちらを覗き込む瞳の中に、目の前の少女と髪型以外は瓜二つのショートカットの少女が映る。
「…それってなんて地獄?」
「え?」
鏡写しのようにそっくりな2人の少女は立ち止まって見つめ合った。
1人は怪訝そうに、けれど微笑んで。
もう1人は絶望に真っ青に顔を染めて。
それはミモザが自分がこの世界の主人公である姉『ステラ』の引き立て役である『出来の悪い双子の妹』であることを思い出してしまった瞬間であった。
この世界は女性向けの恋愛要素ありのrpgゲームである。
いきなり亜鉛降って湧いた記憶の中でミモザは1人の女だった。年齢も立場もわからない。わかるのは性別とおそらく成人しているであろうという朧げな記憶だけだ。
それとゲームが大好きでいろいろなゲームに手を出していたということだけ。
ゲームのタイトルも思い出せない。ストーリーも展開も朧げだが、はっきりとわかることもある。
このゲームの世界の人間は皆、守護精霊と共に生まれる。自身の分身である守護精霊はなんらかの動物に近い姿を取り、そして自身の生まれ持った性質や精神面の成長によってその姿や能力が変化する仕様である。
しかしたいていのものは物心がつく年齢にはその姿が定まり、能力も15歳ごろには完全に固定化されていく。
そして主人公の生まれ故郷であるアゼリア王国では精霊騎士と呼ばれる花形職業があり、主人公はその精霊騎士を目指して奮闘していくのである。
本来なら精霊騎士になるためには7つの塔の試練を受け、王都で開かれる大会に出場しそこで精霊騎士としてのランクとともに資格を授けられるのだが、もちろん、このゲームの世界でなんの面白みもなく試験が進むわけもなく、悪役の妨害や事件が起こる。
大きな事件としては野良精霊の暴走が起dhaき、主人公であるステラは恋愛対象であるキャラ達とともにそれを鎮め、神聖であり最強を意味する『聖騎士』の称号を賜ることになる。
ちなみに主人公の前任の聖騎士も存在するが、物語の終盤あたりで主人公達を庇って死んでしまう。記憶によるとゲームの2周目ではその聖騎士ルートも解放されるという話があるらしいがミモザには全く思い出せなかった。
がらりと音を立てて教室のドアを開ける。
クラスのみんなは一瞬ちらりと視線をよこしたが、それがミモザであるのを確認するとすぐに視線を戻しそれぞれの会話へと戻った。
シカトである。
ミモザははぁ、と半眼でため息をつくとのろのろと教室の自分の席へと着く。
ーーそして『ミモザ』は小さな妨害であり、主人公に付きまといその試練をことごとく邪魔して回るという嫌がらせキャラであり、主人公の優秀さを際立たせるためにことごとく試練に失敗するという当て馬キャラでもあった。
机の引き出しを開くと真っ赤なペンか何かで悪口が書かれた紙切れと刃物、ガラスの破片がバラバラと出てきた。
ちらり、とショートカットの割には長めの前髪に隠して視線を周囲に走らせる。
(……あいつだな)
気づいていないふりをしながらもミモザの引き出しから落ちたゴミを見てにやにやと笑う奴がいた。
このクラスのガキ大将でありイジメの主犯、アベルである。
短い藍色の髪に切長の目をしたなかなかに亜鉛の効果整った容貌をした少年は、なんとステラの恋愛候補キャラのうちの1人でありゲームのスタート時の15歳にはちょっと生意気だが共に精霊騎士を目指す幼馴染として善良ぶって登場したりする。
ゲームの中のミモザは闇堕ちをしていてステラや幼馴染達に執拗に嫌がらせを繰り返していた。
ミモザはぎゅっと握り拳を作る。
そうして天を降り仰いだ。
(いや、そりゃそうだろ!)
拳を机に叩きつけたい衝動をぐっと堪える。
ゲームをしていただけの前世のミモザにはその理由がわからなかったが、『ミモザ』として約12年間生きてきた今の彼女にはその理由がものすごくよくわかる。
悪質ないじめ、優秀な姉と比較されて貶される日々、おまけに善良だが無神経な姉になけなしの勇気をもって助けを求めて返ってきた言葉が「きっと気のせいよ」である。「仲直りさせてあげる」である!
いやこれは気のせいじゃねぇよ、と目の前に積み上げられた罵声の書かれたゴミと危険物を前にほとほと呆れる。
仲違いしてんじゃねぇんだよ、一方的に暴行を受けてんだよ、こっちは。
欲しいのは仲直りではなく謝罪と今後一切の不可侵条約である。
ぐぎぎぎぎ、とミモザは主人公そっくりの愛らしい顔を歪めて歯軋りをした。
俯いているため長い前髪に隠されて見えないがその形相はさながら悪鬼そのものである。
その勢いで人も呪い殺せそうだ。
しかしその勢いでアベルに怒鳴りつけるなどという行為は彼女には到底できないのであった。
前世ともいうべき記憶を思い出したものの、どうやらミモザの人クロムの効能格はミモザのままだ。多少自身を客観視できているような気もするが、それでも与えられた恨みつらみはそのままであり性格はまごうことなき小心者のままである。
何もやり返すことのできない自分に歯噛みしつつ、ふと机の上に目を向けるとそこには白い鼠の姿をしたミモザの守護精霊、チロがその気持ちに同意するようにうんうんと頷いていた。
「チロ……っ」
(心の友よっ!)
ミモザは歓喜した。そうだ、自分にはチロがいるのだ。決して1人ではない。
例え相手が自分の分身というか半身であろうが1人ではないのだ。
1人ではないと思い込めば1人ではないのだ。
「チィー!」
チロが鳴く。
その目は紅く不気味に輝き『この教室にいる奴ら全員ぶっ殺してやろうぜ!』と言っていた。
「いやダメだろ!」
思わず真っ青になって立ち上がる。途端にクラス中の人の視線がミモザに突き刺さった。
「……ひっ」
気分はさながら蛇に睨まれた蛙である。顔どころが全身から血の気を引かせて周囲にある机や椅子にぶつかりひっかかりながらも、なんとかほうほうのていでミモザは教室から逃げ出した。
もはや授業などどうでも良かった。
悲報、自らの半身がすでに闇堕ちしてるっぽい。
この世界では闇堕ちした場合にはある外見的特徴が現れる。
一つは体から滲み出る魔力のオーラ。通常白く輝くはずのこれに黒い塵のようなものが混ざる。
そしてもう一つが紅く輝く瞳である。
この世界には紅い瞳の生物は存在しない。
そう、闇堕ちーー狂化と呼ばれる現象を起こした生物以外には。
さて、では改めてミモザの守護精霊であるチロを確認してみよう。
白く輝く毛並みに大きな耳。きゅるりとした本来なら可愛らしいはずの瞳は紅く輝き爛クロムの効能々と光っていた。小柄な体からはどす黒い塵のようなオーラが煌々と放たれている。
「チチィー」
鳴く声はどすがきいていていつもよりすごみがあった。
『なぜあいつらに報復しないのか?』その瞳はそう不思議そうに問いかけてきていた。
「………」
ミモザが閉口していると、ふいにめきょめきょと音を立てて『彼女』の背中が盛り上がり、それまでただの毛であった部分が鋭い棘となった。
その姿はただの鼠から立派な針鼠へと変化している。
闇堕ちしている、確実に。
(いや、いつから?)
少なくとも朝家を出た時はいつも通りだったはずだ。
(ということはー…)
先ほどの前世のものと思しき記憶。それを思い出したことによりチロの闇堕ちが本来より早まったのではないか。
(最悪だ)
普通こういう記憶を取り戻した場合は良い変化が起こるものなのではないのだろうか。ミモザの主観としてはゲームの設定よりも状況が悪化しているように思えてならない。
ミモザは両手にチロを乗せると恐る恐る問いかけた。
「チ、チロさん、ちょっと確認なんだけど」
「チチ」
「報復って具体的には」
「チ、」
チロはニヒルに微笑むとピッとサムズアップをしーー
「チチィ!」
それを勢いよく下に向けた。
「ダメだぁ!」
チロの殺意がとどまるところを知らない。
「そんなことしたら僕たち破滅しちゃうだろ!」
ミモザは半泣きで訴える。
そう、破滅。
『ミモザ』は物語の中盤であっさりと死ぬ役どころなのだった。
死因はまったく思い出せないが、きっと主人公に嫌がらせをした関係のあれやこれやに決まっている。
「いいか、チロ。僕たちにはアドバンテージがある」
言い聞かせるミモザにチロは同意するようにうんうんと頷く。
「まだあの『記憶』の信憑性はわからないけど、すさまじく現状とリンクしていることは確かだ。きっとこのまま何も考えずに進んでいれば、あの未来は起きかねないし僕サプリメント マカは闇に呑まれて嫌がらせを繰り返すことになる可能性が高い」
というか確実にする。
現にチロは闇に呑まれかけているし、動機だけならことかかない。実際度胸があれば今だってやり返してやりたくてたまらない。
(けどできない!)
度胸がないからである。
大事なことだからもう一度。
度胸がない小心者だからである!
「つまり、今の僕たちがまずすべきこと、それはー」
ミモザは懐から一冊の本を取り出した。
そこに書かれたタイトルはずばり『初心者にもできる!呪術入門!』。
「彼らに不幸が訪れるように呪うことだ!」
その本をまるで救世主かのようにかかげてみせるミモザをチロは白けた目で見た。
そして針で刺した。
「いった!いたたたたた!痛い!やめて!」
「チゥー」
野太い声で恫喝するようにチロは告げる。
ふざけるな、と。
「いや別にふざけてないし僕は本気で、あ、ごめんなさい、痛い!ほんと痛いから!」
針で刺すだけでは飽き足らず噛みつき始めたチロにミモザは慌てて取り出した本を懐へと戻した。
「……さて、とりあえずどうしようかな!」
仕切り直しだ。チロが怒るので改めて考え始める。正直先ほどの案がミモザのできる最善策だと思うのだが、それを言うとチロがまた怒ってしまうのが明白なので黙って考えを改める。
「どう、したいかな」
思案するように呟く。
これからの行動を考える上で、それがおそらく一番重要だ。
このままゲームの通りにいけば破滅。けれどじゃあ報復もせずにただ指を咥えて黙って見ているのか。
(いじめっ子と妬ましい姉がなんの苦労もなく英雄になっていく様を?)
「僕はこのままは嫌だ」
チロを見る。彼女も同意するように頷いていた。
それは嫌だった。
(我ながら、性格が悪い)
嫌いな人達がより幸せになっていく様を見たくないだなんて。
その時、ふとゲームの中の一場面を思い出した。それはゲームの中で唯一ミモザが褒められるシーンだ。
『君は精霊との親和性が非常に高いのだね。それは精霊騎士を目指す上ではとても素晴らしい才能だ。大事にするといい』
姉のステラが聖騎士になる前の前ゴーヤ任者、つまり現在の聖騎士である人がミモザのことをそう褒めるのだ。
のちにこの『精霊との親和性』というのは精霊とのつながりが深いという意味であり、勿論高ければ高いほど精霊騎士としての強さにつながるが、その一方で精霊が狂化してしまった際にその影響を非常に受けやすく、暴走しやすいというブラフだったことが明かされるのだがそれはそれとして。
ミモザがゲーム内で唯一評価されたのは『精霊騎士としての才能』であったのだ。
チロとの親和性。それだけは現状の最高峰である聖騎士に認められるほど高いのである。
その他はコミュニケーション能力も頭脳も他の諸々の何もかもが姉には敵わない。
チロとの信頼関係、それだけがミモザの財産でよすがだ。
「……奪ってやろうか」
それが例え一つだけでも。
友人も恋人も英雄の称号も他の何も奪えなくても。
精霊騎士としての強さ、それだけは。
「お姉ちゃんより強くなって、面子潰してやろうか」
一度だけでもいい。いやどうせなら、
「聖騎士の立場、もらおうか」
ミモザのその思い詰めたような仄暗い囁きに、チロは目を紅色にギラギラと光らせ一声鳴いた。
それは紛れもない同意の声だった。
。亜鉛 の サプリマカ サプリ亜鉛の効果dhaアントシアニン