さて、第一亜鉛

 さて、第一王子アズレン・アルタイル・アゼリアはステラの攻略対象のうちの1人である。
亜鉛の効果 ただし、『バッドエンドの扱いの』という注釈がつく。
 これには三亜鉛つ理由がある。
 一つ目はこのアズレン王子が『誰も攻略できなかった際に救済措置』として結ばれる相手だからである。実はこのアズレン王子、ゲーム中に仲を深めるような亜鉛 の サプリイベントは存在せず、お話の中にちょこちょこ登場する脇キャラである。通常の乙女ゲームでは条件を満たせず誰も攻略できなかった場合は誰とも結ばれないエンドが存在したりするが、このゲームではその際にお情けとしてこのアズレン王子と結ばれるのだ。つまり何もせずにだらだらしていると結ばれるお相手ということである。
 二つ目はこのアズレン王子、婚約者がいてそのお相手が正妃にポリ ペプチド内定している。つまりステラは側妃として迎えられるのである。これは両思いを目指すプレイヤーとしては気に入らないだろう。
 そして三つ目、これはーー
 音楽とともに2人の人物が入場してきた。1人は細身の女性である。紫がかった銀髪を緩やかに結い上げ深い翡翠色の垂れ目をした、たおやかな女性である。彼女は群青色の美しいドレスを身に纏い、物静かな風情で立っていた。
 そしてその隣には金髪碧眼のマッチョがいた。
「ふんっ!」
 おもむろにそのマッチョがマッスルポーズゴーヤを取ると胸元のボタンがブチィッと音を立てて弾け飛ぶ。見事な大胸筋が露出した。
 健康的に日焼けした肌は何かのオイルを塗っているのかテカテカしている。
「皆の衆、本日はよくぞ集まってくれた!」
 マッチョは別のマッスルポーズへと姿勢を変えた。
「今日ここで!私はエスメラルダを婚約者とすることを皆に誓おう!!」
 その満面の笑みを浮かべる口で、白い歯がきらりと光る。
 しばらく会場のみんなは沈黙した。その後我に返ると自分達の役割を思い出し、盛大な拍手をした。
「ありがとう、ありがとう」
 にこにことマッチョこと、アズレン王子が手を振る。
 ーーこれが三つ目の理由。王子は筋肉キャラだった。
 今日って王子の婚約披露宴だったのか、とミモザはやっと状況を理解した。

 ホールには穏やかな音楽が流れdha epaていた。皆それぞれ歓談したり、食事や飲み物を口に運んだりとその場の空気を楽しんでいる。
 王子達へと挨拶は一組ずつ呼ばれて行うらしく、ガブリエルは「呼ばれたから行くわ」とオルタンシア教皇が呼ばれたタイミングでいなくなってしまった。
 ぼんやりと眺めているとこちらに駆け寄ってきた若い使用人が「次です」と囁いて王子の元へと先導するように歩き始めた。
 当たり前のようにレオンハルトが腕を差し出すので若干「僕も行くのか……」と内心思いつつその腕に手を添えてミモザも歩いて着いていく。
 隣を歩くその顔を横目でちらりと見上げると、一応その表情は穏やかな笑みを浮かべていたが、目が死んでいた。
(……苦手なんだろうなぁ)
 その表情を見て悟る。基本的にはローテンションな人だ。あのようにハイテンションな人は不得手なのだろう。ちなみにミモザは人付き合い全体が不得手だが、ハイテンションな人は嫌いではない。
 というよりはあの立派な筋肉が気になる。
(どうやってあそこまで育亜鉛 の サプリてたんだろう……)
 ぜひ教えてもらいたいものだ、と思うがそんな不敬は許されないだろう。
「おお!よく来たな!レオンハルト!!」
 あれこれと考えていると、まだその目前まで辿り着いていないのに馬鹿でかい声が鼓膜を叩いた。
「お前の顔が見れて私は嬉しいぞ!!」
「……俺もです。殿下」
 距離にして5mはありそうな遠くから叫ばれてレオンハルトは一瞬嫌そうにしながらもすぐに笑みを取り繕い、足早にその目の前へと馳せ参じる。
 そのまま騎士の礼を取るのに、ミモザも慌てて真似しようとして思いとどまった。
(危ないっ)
 今はドレスを着ているのだと思い出し、すんでのところで淑女らしくカーテシーをして見せた。
 レオンハルトの付けてくれた教師は淑女としての作法も色々と教えてくれたが、所詮は付け焼き刃、油断するとうっかり忘れてしまう。
 こっそり冷や汗をかいていると「おお!」と頭上から歓声が聞こえた。
「それが噂の弟子か!!くるしゅうない!面をあげよ!!」
「はっ」
 レオンハルトが顔を上げるのに合わせてミモザも上げる。目の前で見る筋肉の塊はなかなかに迫力があった。身長こそレオンハルトの亜鉛の効果方が高いものの、筋骨隆々と盛り上がったその体躯はその肉感ゆえに圧迫感がすごい。心なしか彼の周辺だけ温度が2、3度高い気もする。
 思わずまじまじと見つめてしまうミモザに、彼はその無礼を咎めることなくにこりと笑った。
「私に何か気になるところがあるか?」
「筋肉が……」
「うん?」
「とても美しいと思いまして」
 彼はぽかんとした後、弾けるように笑い声を上げた。
「そうか!!そういった感想はなかなか稀だ!」
「殿下、笑いすぎです」
 側で控えていたスキンヘッドにサンタひげをした男性が静かに首を横に振って言う。彼は宰相のオーティスだと先ほどガブリエルが教えてくれていた。その淡い水色の瞳は呆れている。
「名は何と言う」
 宰相を無視して続けられた言葉にミモザは慌てる。そういえば名乗るのもまだであった。
「失礼致しました。レオンハルト様の弟子のミモザと申します」
「うむ!ミモザか!!先ほどはなかなかの余興であった!!」
「は?余興……?」
 溌剌とよくわからないことを褒めるアズレンに、レオンハルトは渋い表情で「やはりあれは殿下の差し金でしたか」と告げた。
「あれ?」
「先ほど君のことを睨んでいる女性がいただろう」
 レオンハルトの言葉にああ、と思い出す。確かに2人ほど目についた。彼女達がアイリーンとセレーナという名の伯爵令嬢なのだと、やはりガブ亜鉛リエルが教えてくれたのは記憶に新しい。
「あの2人は犬猿の仲で有名でな。余程のことがない限りは2人そろって同じパーティーに呼ばれることはない。わざと呼んだんだ、ここにいるアズレン殿下が」
 思わずアズレン殿下の顔を見ると彼はにやりと笑った。
「あの2人はレオンハルトを取り合っていつも派手な喧嘩を繰り広げているのだ」
 その言葉にミモザはレオンハルトの顔を見る。彼は眉間に皺を寄せたまま黙っている。
「悪趣味ですよ、殿下」
 代わりに宰相がぼそりと苦言を呈した。
「いやぁ、見事な流れであった!2人の喧嘩からのミモザ嬢の登場!!まるでよく出来た喜劇だ!いやいやあそこまで真に迫った表情は劇場では見られんな!」
「殿下」
 咎める宰相に王子は「いいではないか!」と呵呵と笑った。
「我々王族は国民を守るための防衛システムのようなものだが、多少臣下をからかうくらいは許してもらわねばな!政務をする気もなくなるというものだ!!」
「不謹慎です」
 宰相は渋面だ。
「いやしかしミモザ嬢。貴方もなかなか良い筋肉だ。普段はどのようなトレーニングを?」
 気まぐれな気性の持ち主なのか、彼は唐突に話題を変えた。見事なマッスルボディの持ち主にふいに筋肉を褒められて、ミモザは思わずぱっと頬に朱を散らす。
「え、えっと、殿下のトレーニングには敵わないかと思われますが、一応筋トレは一通り……」
 もじもじと告げる。
「なるほど、いやしかし実用的な筋肉亜鉛 サプリ おすすめだ。トレーニングだけではあるまい」
「えっと、そのう、鈍器を少々振り回す程度でしょうか」
「鈍器!素晴らしい!私はよくバトルアックスを振り回しているぞ!!」
「素敵です」
 ミモザは大真面目に頷いた。2人の間には筋肉をとおして通じ合う、信頼に似たなんらかの感情が生まれつつあった。
「のう」
 しかし思わず握手をしかけた2人の間にずずい、と割り込む声がする。そちらを見ると婚約者であるエスメラルダがミモザをじっとりと睨んでいた。
「のう、そち、今のは聞き間違いかの」
 彼女はゆっくりと数歩前に出ると威圧するようにミモザに顔を近づける。
「わらわの勘違いでなければ、今そなたはわらわの将来の夫をたぶらかしたかの?」
 氷のような視線である。ミモザは震え上がった。
「め、めっそうもないです!」
「ほう?ではどういうつもりじゃ」
「そ、その、素晴らしい筋肉の持ち主なので、憧れと申しますか……」
 その返答に彼女はその整った眉根を寄せた。
「むぅ、まさかこのような変態筋肉だるまに興味のあるおなごがおるとは……、盲点じゃった」
「今変態筋肉だるまって言いました?」
 宰相が尋ねるがそれは無視された。
「まさかそなた、我が将来の夫が好みだなどと申すまいな」
 ミモザはぶんぶんと首を横に振る。しかし彼女は納得できないらしい。そのままぐいぐいとミモザに詰め寄る。
「では、どのようなおのこが好みじゃ。もうしてみぃ!」
「え、えーと、」
 ぐるぐると思考が空転する。結果、一番最初にに思い浮かんだ相手は、
「れ、レオン様です!」
 だった。
 エスメラルダはむぅ、と唸ると「我が将来の夫とはまるで違うよう亜鉛じゃな」と頷いた。
「ではまぁ、許してやろう」
「あ、ありがとうございます」
「しかしゆめゆめ忘れるでないぞ。我が将来の夫に手を出してみよ」
 彼女は夫の隣へとゆっくり戻るとミモザを見下ろして胸を張った。
「そなたのことは、ほっぺたをぐりぐりする刑に処す」
「は、はぁ」
 思ったより可愛らしい刑だ。
「焼けた鉄での」
「絶対に手を出しません!!」
 前言撤回、えげつない刑だった。
「はっはっはっ!すまんな、ミモザ嬢。我が将来の妻は少々嫉妬深いのだ!!」
 すすす、と彼女は殿下に近づくとそのまま彼の肩へとしなだれかかった。
「そなたがわらわにつれないのが悪いのではないか」
 その顔は恋する乙女そのものだ。
「よしよし!可愛いやつめ!はっはっはっ!」
 快活にそう言い放った後、アズレンは面白がるようにミモザとレオンハルトを見てにやりと笑った。
「しかしまぁ、おかげでめずらしい奴の面白い顔が見れた。感謝するぞ、ミモザ嬢」
「面白い顔?」
 首を傾げるミモザの横で、最初に話して以降はずっと無言で佇んでいたレオンハルトは誤魔化すように咳払いをした。
亜鉛 サプリ おすすめゴーヤサプリメント マカdhaクロムの効能

 2人でトボトボと亜鉛 サプリ おすすめ

 2人でトボトボと畑に囲まれた道を歩く。まぁ亜鉛の効果、トボトボしているのはミモザだけでレオンハルトは相変わらずの堂々たる足取りサプリメント マカだ。
 ミモザはちらり、と無言で隣を歩く師を見上げた。
「あのぅ、もしかしてなんですが」
「うん?」
 ミモザの言葉を聞くように、レオンハルトは向き合う形で足を止めた。ミモザも立ち止まる。
亜鉛 の サプリアベルのこと、嫌いですか?」
 その疑問に彼はにっと犬歯をみせて意地悪く笑う。それはイタズラが見つかった子供のような笑みだった。
「わかるか?」
「えっと、まぁ、そうかなって」
「嫌いだよ、あんな奴」
 そう吐き捨てるように言った後、ふと思い直したように彼は「ああ」と吐息を漏らした。
「しかしそんなにわかりやすかったか、気をつけゴーヤないといけないな」
「いえ、そこまであからさまではありませんでしたので。でもまぁ、楽しそうだなぁと」
「ふっふ、いやすまない。君にとっては災難だったとは思うのだが……」
 そこでどうにも堪えきれないというようにレオンハルトは笑みをこぼす。それを隠すように手で口元を覆った。
「嫌いな奴を正論で追い詰めるというのは愉快でつい、な。バレないように自重しなくては」
「……あなたにとって幸いであったなら僕も嫌な目にあったかいがあります」
「ここは不謹慎だと責める場面じゃないか?」
 不思議そうに首を傾げるレオンハルトにつられ亜鉛 の サプリるように、ミモザも「うーん」と首を傾げた。
 2人は鏡写しのように向き合って同じ方向へ首を傾げる。
「僕1人だったら嫌な目にあったっていうだけの話でマイナスで終わっちゃうんですが、あなたが喜んでくださるなら補填されてプラスの出来事になるじゃないですか。意味もなく嫌な目にあったわけじゃないと思えるので」
「ネガティブなのかポジティブなのかわからない理屈だな」
 まぁ、君らしいか、とレオンハルトは微笑む。
「まぁ、君がそう言ってくれると俺も遠慮なく面白がれるというものだ」
「悪い人ですね」
「言っただろう」
 首を傾げるのをやめてレオンハルトは笑った。
「俺は不公平な人間なんだ」
 それは悪党にふさわしい凄みのある笑みだ。
「贔屓するべきは僕じゃdha epaなく家族なんじゃないでしょうか?」
 しかしミモザは首を傾げたままだ。ミモザのその疑問に、レオンハルトは笑みを深めた。
「ふふふ、不思議か」
「二人は仲が良いのだと思ってました」
「まさか。あの能天気で恵まれた弟が疎ましくてたまらないさ。格好悪いから言わないだけだ」
 そうだなぁ、とレオンハルトは周囲を見渡す。辺りに人影はなく、あるのは畑と用水路だけだ。
「食べ損ねた昼食でもどこかでとるか」
「よろしいのですか?誰かに見られたら……」
 ミモザとレオンハルトがぐるだとバレてしまうのではないか、そんな不安がよぎる。しかし彼はそんなミモザの懸念を一笑にふした。
「いじめられて落ち込んでいる子どもを慰めるだけさ」
「なるほど」
 それなら、とミモザは頷いた。

 2人並んで適当な木陰へと座り、畑を眺めながらサンドイッチを食べる。用意したコップには水筒からいつものミルクティーをそそいでゴーヤいた。
「俺の父親はどうしようもないろくでなしの呑んだくれでな、精霊騎士としては優秀だったようだが酒で問題を起こして軍を首になってからは更に荒れた。母親は娼婦でこっちも酒癖の悪いかんしゃく持ちでね。幼い頃は二人によってたかって殴られたものだよ」
 遠い記憶を思い起こすようにゆっくりとレオンハルトは語った。その口調は内容とは裏腹に随分とのんびりとしており欠片も悲壮感はない。
「ああ、同情は不要だ。母親は俺が幼い頃にあっさり死んだし、父親も俺の身体がでかくなって敵わなくなると大人しいものだったよ。それに俺は元から両親のことを好きではなかったし、なんの期待もしていなかった。まぁ可愛げのない子どもだったんだな」
 この傷も父親がやったものだ。と右目の火傷跡を見せる。
「幼い頃に、なんだったかな。火鉢の炭だったかなんだったかを押し付けられたんだ」
 ああ、火鉢ってわかるか、中に焼いた炭を入れる暖房器具なんだが、とジェスチャーをし始めるのに、「知ってます」とミモザは頷いた。
「見たことはありませんが、知識としては」
「そうか、正直今では廃れて使ってるのなんて魔導石もろくに買ゴーヤえないような貧乏人だけだろう」
「そうなんですか」
 ミルクティーに視線を落としながらミモザが相槌を打つのに、レオンハルトは苦笑して頭を掻く。
「まぁ、可愛くない子どもは蔑ろにされて当然だ」
 誤魔化すように言われた言葉にミモザは顔をしかめた。
「……当然じゃないですよ」
 全然当然ではない。
「おかしいです」
「……そうか」
 レオンハルトは否定せず、何故かミモザを慰めるように頭を撫でた。慰められるべきはレオンハルトだというのに変な話だ。
「もしまたそのようなことがあれば、今度は僕が守ります」
「すまないが、俺はもう自分自身で身を守れるし君よりもずっと強い」
 そう言いつつもレオンハルトの口元は嬉しげに緩んでいる。ミモザはつまらなそうに口を尖らせた。
「アベルの母親のカーラさんと再婚した頃は一番穏やかだった。たった4年しか持たなかったがね。彼女は賢明な女性だった。親父の『病気』が再燃するとすぐさま切り捨てた。……一応俺のこともアベルとともに引き取るつもりだったようだ。しかしそれは親父が拒んだ。別に俺に愛情があったわけじゃない。カーラさんに嫌がらせがしたかったのさ」
 そこで彼はミルクティーで口を湿らせた。普段こんなに長く話すことのない人だ。どうやら話しずらいらしい。先ほどからあまり視線が合わない。
「2人で王都へ行ってからの日dha々は最悪だったよ。しかしまぁ、王都にいたおかげで道が開けたとは言えるだろうか。俺は生まれつきガタイが良くて強かった。しばらくの間は精霊使いとして小銭を稼いで暮らしたよ。王都では需要に事欠かなかったからな。その関連で人に精霊騎士を目指してはどうかと言われてこうなったのさ」
 精霊使いというのは騎士の資格は持たないが精霊で戦うことを生業としている人達のことだ。騎士になるには色々と条件があるため、あえて騎士にならずに精霊使いとして働く人も多い。むろん、資格職なぶん、精霊騎士のほうが収入は安定していることが多いのだが。
 最初弟とカーラに会いに行ったのは安心させるためだったのだ、と彼は言った。
「彼女は俺のことも実の息子のように可愛がってくれていた。だから俺が無事であるということと、数年とはいえ穏やかに暮らさせてもらったことの恩返しもできたらと思っていたんだ。金は受け取ってはもらえなかったがね」
 苦笑する。伏せられた金色の瞳を憧れるように細め「彼女は理想の母親だった」と囁いた。
「弟のことも可愛がるつもりでいたさ。だが俺がくだらない親父の相手をしている間も、貧困に喘いでいる間も、あの弟は彼女のもとでぬくぬくと育っていたのだと思うと可愛がる気になれなくてな。この田舎の村で俺のことを笠にきて自慢するのを見ていると、ますます萎えてしまった。まぁ、あいつは別に悪くないさ。ただ逆の立場だったらと思う事が時々ある。要するに、ただのみっともない嫉妬さ」
「そうですか、なら僕と同じですね」
 ミモザマカの言葉に、やっと彼はミモザのほうを向いた。ミモザはそれを見つめ返す。
「僕には出来のいい姉がいて、彼女は僕の欲しいものを全部持ってるんです。だから僕はそれが羨ましくて……」
 体育座りをしている膝に、こてん、と頭を預けてミモザは無邪気に笑った。
「僕たち、おそろいですね」
「……嫌なお揃いだな」
 苦虫を噛み潰したような顔をしてみせて、しかしすぐにレオンハルトは口元に淡い笑みを浮かべた。
「初めて人に話した」
「僕もです」
「内緒だぞ。格好が悪いからな」
「はい」
「君の話も内緒にしておいてあげよう」
「まるで共犯者みたいですね」
「まるでじゃないさ」
 ミモザが見つめる先で、彼は金色の目をにやりと歪めて悪いことに唆すような甘い声を出す。
「俺と君は共犯者だよ、間違いなく。だって一緒にアベルのことを陥れただろう」
 人差し指を一本立てて見せると、それをミモザの唇へと押し当てた。
「内緒だ」
 しー、と吐息を吐き出す彼に、ミモザも同意するようにしー、と息を吐き出した。
 2人は身を寄せ合って笑った。
亜鉛の効果マカ と はクロムゴーヤ チャンプルー

 レオンハクロムの効能

 レオンハルトとの出会いから3ヶ月後、ミゴーヤ チャンプルーモザは、
「ふんふポリ ペプチドんふんふん!」
 腕立て伏せ100回も軽くこなせる細マッチョへと華麗なる変身を遂げていた。
「ふんふんふんふん!」
 腹筋もなんのそのである。お腹にはうっすらと線が入り夢のシックスパックである。
「ふんふんふんふんふん!」
 ダンベルなんてアントシアニン高価なものはないので森から調達した岩を上げ下げする。最初は手のひらサイズの岩でぜいぜいと息を切らせていたが、今は自分の上半身くらいの大きさの岩も軽々とはいかないが持ち上げることができる。
「ふんふんふんふんふんふん!」
 ランニングもなんのそのだ。村の外周10周くらいは朝飯前だ。
「ふんーっ!!」
 ブシャァアア!
 ミモザはりんごを両手で握り、気合を入れて握りつぶした。dha epaコップの中へとばらばらと落ちていくのを見守り、コップを掴むとそのまま豪快に天然100%りんごジュースをごくごくと飲み干す。
「ぷはぁっ!最高の気分だ!」
 実に清々しい。
 筋肉を身につけてからのミモザは内面が明るくなるのを感じていた。自信がついたのだ。
「力こそパワー!筋肉は裏切らない!!」
 きゃっきゃっとはしゃぎながらミモザは森へと繰り出した。
 ちなみにこの3ヶ月間、レオンハルトの来訪は一度もない。

 どうしてこうなったのだろう。
 だらだらと脂汗を垂らしながら、数時間前の浮かれていた自分のことをミモザは嘆いた。
 ミモザの目の前には今、
サプリメント マカウルルルルゥ!」
 低い唸り声を上げ、両腕を挙げて威嚇する熊型の野良精霊がいた。

 途中まではいつも通り順調だったのだ。
 森の浅瀬でここ最近ですっかり慣れ親しんだうさぎ型の野良精霊と戯れ、一月前あたりから攻略を開始した森の半ば周辺で犬型の野良精霊を狩る。
 12匹ほど狩り、のんびりと魔導石の採取をしていたところで異変は訪れた。
 まだミモザが足を踏み入れたことのない森の奥の方から大量の野良精霊が現れたのである。
「は?」
 驚きつつも身構えるミモザのことを、しかし彼らは無視して通り過ぎていった。
 まさに台風一過、土埃を巻き上げて彼らは去って行った。
「一体なんだったんだ?」
 その勢いに気押され走り去る姿をすっかり見送ってから、ミモザは呑気に彼らが走って来た方角を振り返りーー、
 そこに3つの紅い目を亜鉛 の サプリ光らせどす黒いオーラを身にまとい、仁王立ちをしている巨大な熊の野良精霊の姿を見た。
「………え?」
 そして今、話は先ほどの場面へと戻る。
 突然現れた大物に、ミモザはメイス姿のチロを握りしめて立ち尽くしているのであった。
 
(というかこいつ、ゲームのイベントで登場する中ボスでは?)
 その明らかに狂化個体である熊を見て思う。確かステラ達が最初の試練の塔に向かう途中に現れる序盤の中ボスだ。
 さて、ステラ達は一体どうやって倒していたんだったかと考えている間に、
「グアアラァ!!」
 その熊の野良精霊は挙げていた両腕をミモザに向かって振り下ろしてきた。
「………っ!」
 慌てて後ろに飛び退き避ける。
「このっ!」
 ちょうどミモザが避けたせいで熊は両腕を地面につくような姿勢になり隙ができた。それを見逃さずミモザはメイスを横殴りにその顔面へと叩きつける。
「……っ!?かったい!」
 しかしそれは骨に当たる鈍い音を立てただけで終わった。熊の頭は確かに殴ったはずなのに向きを変えサプリメント マカることもなく、紅い目がぎょろりと動いてミモザを睨む。
 そのまま頭を一瞬低く下げると下からすくい上げるようにしてミモザのことを頭突きでメイスごと吹っ飛ばした。
 身体が宙に浮く。熊は飛んだミモザがどこに落ちるのか確認するようにこちらを眺めていた。
 このままでは川から跳ね上げられた魚のように美味しくいただかれてしまう。
「このやろう」
 ミモザは悪態をつくとメイスを振りかぶり棘を伸ばして少し離れた木へと刺す。そのまま棘を縮めると刺さった木に吸い寄せられるようにして枝の上へと着地した。
「ウルルルルルルルッ」
 大人しく落ちて来なかったことに怒ったのか、唸りながら熊はミモザの着地した木の幹へと突進した。何度も頭を打ちつけてくるたびに幹は悲鳴を上げ折れるのも時間の問題だろう。
(うへぇ、どうしようかな)
 とうとうバキィと小気味良い音を立てて木は真っ二つに折れた。
 熊はこちらを目掛け大きな口を開けて歓喜の咆哮を上げる。
 ミモザはというとメイスを足場にするように自身の身体より下へと向けるとそのまま棘を伸ばし、落下速度と全体重をかけてその棘を熊の口の中へと突き刺した。
 さすマカがに口腔内はそこまでの強度がなかったらしい。熊は直立したような姿勢で串刺しとなり、しばし蠢いたのち絶命した。
「うわー、えぐー」
 足元に広がる光景に自分でやっておきながらミモザはちょっと引いた。
 地面へと飛び降りるとチロをメイスから鼠へと戻す。
「これ、やっぱりイベントの奴だよなぁ、なんだってこんなタイミングで。フライングなんてレベルじゃ……」
 言いかけてハッとミモザはあることに気がついた。
(これ、倒して良かったのか?)
 本来なら姉が3年後に倒すべき相手である。
(ストーリーになにか影響があったら……)
 ミモザは元々のストーリーを頼りに対策を打っているのである。もしチロの狂化のように今回の件で何かが早まってしまうとそれだけでミモザの修行が間に合わなくなってしまう可能性がある。
「ど、どうし…」
 よう、と言いかけて、ミモザの言葉は途切れた。
 何故ならがさがさと草むらが不穏な音を立て始めたからである。
 ミモザはその草むらの動向を見守った。
 がさり、と一際大きな音を立てると何かがでてくる。
 それは先ほど倒したのと同じ、紅い目が3つあるどす黒いオーラを放った熊だった。
 全部で10匹くらい居た。
亜鉛 サプリゴーヤ チャンプルーゴーヤ チャンプルークロムの効能

「打ち合わせをdha epa

「打ち合わせをしよう」と彼は言ったゴーヤ
「打ち合わせ」
「君の母親にと亜鉛 サプリって俺は憎いいじめっ子の義兄、つまりは敵だ」
「なるほど」
 つまり話がスムーズに進むように作戦を練ろうということだ。ミモザとしてもレオンハルトが責を負うのは本意ではないため頷いた。
「まマカずはレオン様が敵ではないということを説明するところからですね」
「そうだな。あともう一つ、実は提案があってね。そっちの方も一緒に許可を得たい」
「提案?」
 首を傾げるミモザのことを真っ直ぐに見下ろして、レオンハルトは尋ねた。
「君、王都に来ないか?」
 ミモザはぱかん、と口を開けた。

「この度は、誠に申し訳ありませんでした」マカ と は
 レオンハルトは深々と頭を下げた。ミレイはそれを険しい顔で見下ろしている。
 場所は家の玄関だった。突然の訪問に驚いたミレイは、すぐにミモザの顔の傷に気づいて顔をしかめた。そしてレオンハルトの説明を聞くにつれどんどんとその表情は固くなり、それはレオンハルトの謝罪を聞いてもやわらぐことはない。
 英雄の登場に最初は喜んで近づいて来ようとしたステラも、事情が事情だけにミレイに下がっていろと言われて家の中で大人しくしている。しかし好奇心が抑えられないのか少し離れた位置マカ サプリからこちらをちらりちらりと覗いて聞き耳を立てているようだった。
「レオンハルトさん」
 ミレイは重い口を開く。
「アベルくんは直接謝罪には来ないんですか?」
「もっともな疑問です。しかし今アベルは謝罪に来れる状態ではありませんので代わりに俺が…」
「どういうことです?」
「反省していません」 
 そのあっさりと告げられた言葉に息を呑むと、ミレイは一層表情を厳しくした。
「それはどういうことですか!」
「ま、ママ!」
 慌ててミモザは仲裁に入る。
「レオン様は悪くないよ。そんなに責めないで。僕のことをアベル達から助けてくれたんだよ」
 ミモザの言葉にミレイの肩からほんの少しだが力が抜けた。それを見てミモザは畳みかける。
「元々レオン様は僕と時々遊んでくれアントシアニンてて、勉強とかも教えてもらってたんだ。このリボンをくれたのもレオン様」
 ミモザは首に結んだリボンを示す。ミレイが驚きに目を見張るのに、レオンハルトは「申し訳ありません」と再度頭を下げた。
「お嬢さんと勝手に関わりをもってしまって……、本当ならきちんとご挨拶に伺うべきだったのですが」
「レオン様は忙しいから、ママとタイミングが合わなくて」
「どうして教えてくれなかったの?」
「信じてくれないと思って」
 何せ相手は英雄だ。その言葉には信憑性があったのかミレイは納得したようだった。
「アベルは結局謝ってくれなかったの。それをカーラさんとレオン様は重く見て、今のままうちに連れてきても上べだけの謝罪になっちゃうからって。ちゃんと反省させてから謝罪させるって言ってくれたんだよ」
「そんなこと……、どうやって」
「カウンセリングを考えていマカ サプリます」
 レオンハルトは下げていた頭を上げて静かに告げた。
「アベルの暴力行為は素人でどうこうできるものではないと考えています。なので然るべき機関に相談をして対応しようかと。とりあえずは通院させる予定ですが、それでも治らないようなら入院させます」
 入院と聞いて、ミレイも少し怯む。しばし黙って考え込んだ後「信じていいですか」と問いかけた。
「信じていいですか。私たちは一度裏切られました。もう一度同じようなことは起こらないと信じていいですか」
「約束します」
 レオンハルトはしっかりと頷く。金色の瞳には誠実そうな光が瞬いていた。
「このようなことが起きないようにきちんと手を打ちますし、もし万が一があればすぐに入院させます。その件で一つご相談があるのですが」
「相談?」
「本当は、このような形で切り出すつもりはなかったのですが……」
 そこで彼は少し言いづらそうに逡巡し、そして何かを決心したかのように口を開いた。
「ミモザくんのことを、俺に預からせてもらえませんか」
「え?」
「彼女を俺の弟子として、秋休みの間王都で預かりたい亜鉛 サプリ おすすめのです」
「……どうして」
 ミレイの当然の疑問に同意するように一つ頷く。
「理由はいくつかあります。一つは今回の件。アベルのカウンセリングが進むまで、そしてミモザくんの気持ちが落ち着くまで、決して顔を合わせることがないようにしたいのです」
「それなら、」
 言わなくてもわかっている、というようにレオンハルトは手のひらを突き出し言葉を制する。
「弟のアベルを王都に、と思われるかも知れませんが、アベルに反省を促すためには母であるカーラさんと共に居させた方が良いと思うのです。カーラさんはアベルに言いました。もしもミモザくんと同じ目にアベルが合わせられたらその相手のことを憎むと。アベルはその言葉を聞いて多少、自分の行いの非道さを認識した様子でした」
 その言葉にミレイはハッとしたような表情をした後考え込む。ミレイもカーラの人柄は知っているのだ。前回のいじめ騒動の時もとても誠実に対応してくれたことも。
「そして二つ目は、単純にミモザくんには精霊騎士としての才能があるからです。このまま不登校のせいで実践の指導が受けられないというのは彼女にとって損失です。しかし学校に行くのは辛いでしょう。俺の下でならアベルと会うことなく、実践的な訓練ができます」
「……。ミサプリメント マカモザ、あなたはどうしたいの?」
「できればレオン様のところで修行したい」
 葛藤するような母の言葉に、しかしミモザは縋り付くようにそう訴えた。
 その娘のいつにない強い主張にミレイは息を呑む。苦しげに目を伏せ、「……わかりました」とか細く告げた。
 はっとミモザは顔をあげる。その期待のこもった眼差しにミレイはため息をついた。
「ただし、手紙を書くように。秋休みが終わったらうちに帰してください」
「ありがとうございます」
 レオンハルトは深々と頭を下げ、
「ありがとう!ママ!」
 ミモザは手を合わせて喜んだ。
マカ と はポリ ペプチドdha

 夜の帷もdha epa dha

 夜の帷も下りクロム、月の光が室内にこぼれ落ちてきていた。貴重な蝋燭をいくつも燃亜鉛 サプリ おすすめやし室内は煌々と光っている。寝室のベッドであぐらをかき、酒の入ったグラスを傾けながらレオンハルトは、
 超絶不機嫌だった。
(どうしようかなぁ)
 すぐに空になったガラスに酒を注ぎながらミモザは無言で困る。こうなった原因については、話を昼頃にマカ サプリまでさかのぼる必要があった。

「少しお時間をよろしいでしょうか」
「かまいませんよ。俺になんの用事でしょうか?」
 そう声をかけたジェーンという女性に、レオンハルトは周囲をちらりと目線だけで流し見るとすぐに笑顔を作って鷹揚に頷いた。
(猫かぶりモードだ)
 随分と久しぶりに見た気がする。周りを見渡すとなるほど、通行人や近くのカフェにいる人などがこちらゴーヤを見ていた。ついでにあれは記者だろうか、こちらに隠れているつもりなのかさりげなくメモ帳にペンを走らせている人もいる。レオンハルトは背も高く非常に目立つ人のため、衆目に晒される場所ではあまり素っ気ないこともできないらしい。
「私は試練の塔被害者遺族の会の者です。最近娘を亡くしまして入会致しました。エリザ、いえ、貴方にはわからない話なのでそのあたりは割愛させていただきますね」
「いえ、わかりますよ。3ヶ月前に亡くなられたエリザ嬢のお母様ですね」
 レオンハルトの返しに彼女は目を見張った。まさか前日に未発売のはずのコラムを読んで予習をしていたなどとは予亜鉛 サプリ おすすめ想だにしないだろう。
 彼女は思わぬ切り返しにしばし逡巡した後「では、どういった用件かはわかっていただけると思いますが」と前置きをして深々と頭を下げた。
「どうか、貴方様から教皇聖下に試練の塔閉鎖についてご進言いただけないでしょうか」
 それはかろうじて疑問形を取っているが、明らかな脅しであった。
(まずいなぁ)
 この状況が、である。大勢の人前で切々と訴え頭を下げる女性。要求は塔の閉鎖、盾に取られているのはレオンハルトの評判だ。これで突っぱねるような真似をすればレオンハルトが悪者である。この状況を見ると記者らしき男は実は仕込みではないかと勘ぐりたくもなる。
(レオン様に泥を被らせるわけにはいかない)
 幸いなことにミモザは公的な立場を持たない人間、しかも子どもである。ミモザの監督責任を亜鉛 サプリ おすすめ問われることはあるかも知れないが、それでもレオンハルト自身を追求されるよりは遥かにマシだろう。
 ミモザは一歩前に出ようとして、ぐっとレオンハルトに押し留められた。思わず彼の顔を見ると余計なことはするなと言わんばかりに睨まれる。
 大人しく一歩下がる。それを確認するとレオンハルトはその場に膝まづき、女性の手をうやうやしく取った。
「ご心痛、お察し致します」
「それじゃあ」
 要望が通ったのかと顔をあげた女性に、レオンハルトは痛ましげな表情でゆっくりと首を横に振った。
「本当に、なんとお詫び申し上げればいいか。俺が助けに行ければ……、すべてこのレオンハルトの不得の致すところです」
「えっと……」
 戸惑う女性の手を一際強くぐっと握りしめ、彼は女性の顔を真摯に見つめた。
「俺はできる限りすべての人を助けたいと思っています。しかしこうして力の及ばないことが未だにある。きっと今後もゼロにはならないのでしょう。しかし必ず!精進を重ね、このような不幸な事故を減マカらしてみせるとお約束致します!」
 その演説に周囲からは「おおっ!」と歓声が上がる。
(うわぁ)
 稀代の詐欺師である。目には目を歯に歯を。レオンハルトはあっさりと話題をすり替え、それどころか周囲の民衆を使ってあっという間にその場の空気を変えてしまった。
 この空気では「自分のせいで助けることが出来なかった」と自分を責めるレオンハルトに下手に言い募れば、悪役になるのは今度は女性の方だろう。
「ええっと、その、私は……」
 このような切り返しは想定していなかったのだろう、女性は言い淀む。それにレオンハルトは何かを察したように頷いてみせた。
 何を察したのかはきっと誰にもわからない。
「ジェーン様、どうか俺に挽回のチャンスをください」
「えっと」
 戸惑ったジェーンはわずかに身体を揺らした。それを勝手に頷いたと受け取って、レオンハルトは「ありがとうございます!」と感極まった声を出し彼女を抱きしめる。
「必ず!貴方のその慈悲に報いてみせます!必ず!」
 そこで身を離すと彼女を真っ直ぐに見つめる。
「次は救ってみせます」
 その言葉に周囲から拍手と歓声が起こる。レオンハルトの真摯さを讃えるクロムその場所で、ジェーンはその空気に呑まれたように「き、期待しているわ」と口にすると逃れるように足早に立ち去ってしまった。

 そして現在に至る。昼間に感動的な大演説を繰り広げた当人は、だらしなく布団の上に酒とつまみを持ち込んでヤケ酒をあおっていた。ちなみにこれは今日が特別行儀が悪いわけではなくいつもの晩酌のスタイルである。平民出身でそれなりに貧困層であったレオンハルトは椅子ではなく地べたに座っているのが落ち着く傾向があるらしい。地べたでなくベッドであるのがきっと彼なりの精一杯の配慮だ。
「昼間は機転の効いた切り返しでしたね」
 とりあえず褒めてみた。
「ああいう場合は下手に空気を読まないほうがいいんだ。君も覚えておけ」
「はぁ」
 ミモザには覚えていたところで到底実行できそうもない手段だ。そしてレオンハルトの機嫌は悪いままだ。
(どうしようかなぁ)
 こういう時はジェイドは当てにならない。基本的には有能で困った時に頼るとなんでも解決してしまう彼だが、使用人という立場ゆえなのかレオンハルトに対してはだいぶ及び腰である。まぁ気持ちはわからなくはない。ミモザも最初の頃はレオンハルトの機嫌が悪いとひたすらに怯えていたものだ。
(こういう時は仕方がない)
 うん、と一つ頷くとミモザは……、黙っておくことにした。
 こういう際にミモザにできることはあまりな亜鉛の効果い。ひたすら給餌に徹し、レオンハルトが話し出したらその話を傾聴するのみである。
 時間はかかるが結局それが一番良い解決策である。
「まったく理解できん」
 しばらく無心でお酌をしていると、ぽつりとレオンハルトはそう溢した。
「なぜ試練の塔を閉鎖したがるのか。そんなことをしたところで亡くなった娘は帰ってこない。ましてや彼女の娘は第5の塔に挑むほどの胆力と技量のある人だぞ。そんな女性が試練の塔の閉鎖を喜ぶとはとても思えん。娘の望まぬことを貫こうと努力するなど……、理解に苦しむな」
 通常試練の塔は番号が小さいほど容易く、大きくなるにつれて危険度が増す。そしてその1番の境目が第4の塔からだと言われている。
 つまりある程度腕に自信のある者しか第4以降の塔には挑まないものなのだ。大抵の人は第3までで止めるため、第4の塔を修めたといえばそれだけで尊敬される。エリザという女性はまさしく第4の塔を修め、第5の塔に挑み帰らぬ人となったのだ。
「僕は少し、……わかる気がします」
 レオンハルトの嘆きに、しかしミモザは素直に頷けなかった。
「なに?」
 彼の眉間に皺がよる。それに苦笑を返してミモザは空になったグラスに再び酒を注いだ。
「これは想像でしかありませんし、ジェーンさんには口が裂けても言えませんが、ちょっとわかる気がします。もしも僕の大切な人が亡くなってしまったら、きっと僕は助けられなかった自分を悔いて、そして今からでも何かできることはないかと模索すると思うんです」
 レオンハルトが死んだらポリ ペプチド。ミモザは思う。このままゲームのストーリー通りに進めば彼は死ぬ。そうなったら、知っていたのに防げなかったとしたら。
「死者にしてやれることなどない」
 弾かれたように顔を上げる。見るとレオンハルトは真剣な表情でミモザを見下ろしていた。ミモザは微笑む。
「それでも、貴方が亡くなってしまったら、僕は貴方のために何かできないかときっと必死になってしまう」
 レオンハルトが息を飲む。そこでミモザは自分が不謹慎なことを口にしたと気づいて慌てた。
「す、すみません!不吉なことを……」
「いや、いい……」
 何かを噛み締めるように、思いを馳せるようにレオンハルトは言う。
「続けろ」
「えーと、つまりですね。きっと亡くなったことが受け入れられないんです。だから貴方のために、何かしようだなんて不毛なことを考える」
 ミモザは半ばやけくそで言葉を続けた。彼は黙って聞いている。ミモザは観念した気持ちになって全部吐き出すことにした。
「だって、貴方のためにって頑張っている間は貴方の死と向き合わなくて済みますもん。目を逸らしていられる。だって僕は貴方のために頑張っているから」
 でも、と目を伏せる。
「目的を達成しても、残るのは貴方がいないという事実とそれを認められない自分だけです。だからきっと彼女も目的を果たしても、あまり報われないんじゃないでしょうか。少なくともやったーとは思わないんじゃないですかね」
「なるほど」
 レオンハルトは酒をあおった。先ほどまでよりもそのペースは落ち着いてきている。
「あの、本当に僕の気持ちでしかないので、彼女もそうかどうかはわかりませんよ」
「いや、しかしその理屈ならわからなくもない。ただこれ以上犠牲を出さないため、と言われるよりも納得がいく。参考になる」
 それで?と彼は尋ねた。dha epa
「どうしたら死を受け入れられる?参考までに聞かせてみろ」
 うっ、とミモザはつまる。そこまで具体的に考えてはいなかった。
「えー、えーと、お墓参り、とかですかね……」
「なるほど?」
 ミモザのしどろもどろの言葉に、彼は眉をひょいとあげて見せた。
亜鉛 サプリ おすすめマカ亜鉛の効果dha epa dha

 試練の塔、亜鉛

 試練の塔、第1の塔はチュートリアルの塔である。
 亜鉛 サプリ敵は一切出現しない。ただマクロムの効能ップの見方や試練の塔の説明のためにあるような塔である。そのためその試練の内容は至極簡単で子どもでもできるお使いのようなものだ。あちらこちらに隠されているはずの鍵を探して塔の最上部にある扉に挿す、ただそれだけであポリ ペプチドる。ただし鍵は3種類ある。そう、金銀銅の3種類だ。そのうちのどの鍵を見つけられるかにより、祝福の精度が変わるのである。そして今、ミモザはーー
「銅しか見つからない……」
 大量の銅の鍵を抱えて途方に暮れていた。
 もはや疲れ果てて天を見上げる。そこにはやはり塔の中にも関わらず綺麗な青空が広がっていた。
「クソゲーめ……」
「チー…」
 チロが慰めるようにミモザの頬を撫でる。ミモザはその優しさに「うっ」ゴーヤと泣き崩れた。
 あたり一面には色とりどりの花畑が広がっていた。蝶々や蜂がぶんぶんと飛び交っている。その中で1人地面にへばりつくミモザ。
(悲しい……)
 いや、わかってはいたのだ。そうなるかも知れないと予測はしていた。
 しかし予測していたのと実際に起こるのとではやはり重みが違うのだ。
 通常確かに銅より銀の方が見つかりにくい。金など見つけられる人間は稀である。しかし銀は一般的に見つかる部類のはずなのだ。
 周囲を見渡せば銀の祝福を持っている人は普通にいる。特に騎士を目指すわけではない人でも普通に持っている。
 故にゲームのノーマルモードは銀で、ハードモーゴーヤドは銅なのだ。
「あの…、大丈夫ですか?どこかお怪我でも……」
「いやちょっと世界に絶望してただけなので大丈夫です」
「それは大丈夫なんでしょうか……」
 親切に声をかけてくれた人物はそこまで言って、「あれ?」と声を上げた。
「ミモザさん?」
「はい?」
 名前を呼ばれて顔を上げる。
「……何やってるんですか?本当に」
「僕の中の金髪美少女は地べたにへばりついたりしないんだけどな」と神妙な顔で呟くのは王国騎士団団長の弟子、ジーンであった。

「ミモザさん、まだ塔の攻略されてなかったんですね」
「そういうジーン様もですか?」
「ええ、僕は学園を先日やっと卒業しましたので」
「なるほど」
 やっと地面にへばりつくのをやめてその場に座るとミモザは頷いた。それは実によくある話だ。
 塔の攻略は13歳以上ならば可能だがdha、本当に13歳を迎えてすぐに攻略に向かうのはだいたいが学校にもあまり通えないような貧困層である。なぜなら塔の攻略いかんによって就職先や給料が大きく左右されるからだ。
 一応この国ではどこに住んでいても学校に通い、基礎教育を受けられるように整備が進んできているが、無料というわけではない。国から補助金が出ているため安価ではあるが、それでも少しのお金でも切り詰めたい場合や子どもに働いてもらいたい状況の場合は通えない者も多い。レオンハルトなどはこの例である。
 対してミモザやジーンなど学校に通えている者は学校卒業後、つまり15歳に塔の攻略を始めることになる。これは当然、学校を卒業していた方が卒業していない場合よりもその後の進路に幅が広がるためである。
(学園に通ってたならなおさらだろうな)
 学園といった場合に指し示すものは王都にある国立中央学園のことである。これは貴族の子息、子女が通う学校でミモザが通っていた学校など比較にもならないくらいのエリート校であり、そして国立にも関わらず非常に高マカ と はい学費の必要な学校である。一応最近は特待生制度などができ、平民や貧しい人も優秀であれば通えるようになってきたらしいがまだまだ貴族のエリートが通う学校としての印象が強い。ここを卒業すれば国立中央学院という更なる叡智を学べる研究機関への道が開かれるのだ。当然、いつでも誰でも挑める塔の攻略などより学園の卒業のほうが優先されるだろう。王国騎士団団長の弟子な時点でエリートだとは思っていたが、彼はミモザの想像以上の超エリートだったようだ。
「僕も先日学校を卒業したので今日から攻略開始です」
「へぇ」
 ジーンは意外そうに相槌を打った。おおかたレオンハルトの弟子なので学校に行っていないと思われていたのだろう。
(まぁ、間違いではない)
 厳密には通っていない。不登校なので。
「そういえば……、先ほどミモザさんにそっくりの金髪美少女に出会ったのですが、お知り合いでしょうか?」
「えっ」
 のんびりと続けられた言葉にぎょっとする。ミモザにそっくりな人間などこの世に1人しかいない。
「確か名前はステラさんとおっしゃっていました」
「ど、どこで会ったんですか!?」
「え?ええと、王都の大通りで……、お買い物をされていたようゴーヤで」
 その言葉にほっと胸を撫で下ろす。どうやらまだ塔に来ているわけではないらしい。なるべく鉢合わせたくないのだ。
「ええと、彼女は……」
「あ、僕の姉です。双子で」
「ああ、通りで。あんまりにそっくりなのでミモザさんかと思って間違えて声をかけてしまったのです」
 続けられた言葉にミモザは「ん?」と首を傾げる。どこかで聞いたことのあるような話だ。
 王都、知り合いと間違えて声をかける、エリート。
「攻略対象……?」
「はい?」
 思わず行儀悪く指差したミモザに、ジーンは不思議そうな顔をする。その顔をまじまじと見つめるが、正直まったく思い出せない。
 清潔に切り揃えられたサラサラの黒い髪に優しげな黒い瞳。爽やかな笑顔で立つその姿は、
(まぁ、イケメンといえばイケメン)
 攻略対象であっても不思議ではない。
 ゲームの攻略対象はレオンハルトと王子の隠しキャラ2人を除くと全部で5人。全員所属する組織が違うのが特徴である。幼馴染のアベル、被害者遺族の会のマシュー、そしてあと出てきていないのは保護研究会と学園のエリート、大人枠の学院の教師である。
 特徴としてはジーンは十分に当てはまっている。ここまで共通項があれば彼が攻略対象とみて間違いないだろう。
(全く思い出せないけど!)
 まぁ、全ての記憶があるわけゴーヤではないから気がつかなくてもしょうがない、と誰ともなしに心の中で言い訳していると、ジーンははぁ、と残念そうにため息をついた。
「ミモザさんって金髪美少女なのに、らしからぬ性格をしてますよね」
「最初に会った時も思ってましたがジーン様のその金髪美少女に対する歪んだ価値観は一体なんなんでしょう?」
 こてん、と首を傾げるミモザにジーンがむっ、と眉を寄せる。
「歪んでませんよ」
「歪んでますよ」
「美少女は巨乳なんて言わないし地べたに這いつくばらないんですよ、普通は」
「誰だって巨乳って言っていいし地べたに這いつくばる権利くらいありますよ?」
 そのまましばらく2人は見つめ合った。ややして「ああ」とミモザは納得したように頷く。
「もしかしてジーン様、あまり女性と接したことがないんでしょうか」
「は、はぁーっ!?」
 明らかに動揺したようにジーンは目を剥いて声を上げる。
「あ、ありますよ!先生は女性じゃないですか!」
「じゃあ同年代の女子と接した経験は?」
 彼はそっぽを向いてうつむいた。
「く、クラスメイトと」
「クラスメイトと?」
「あ、挨拶くらいしたことあるし?」
「つまりそれ以外はないんですね」
「うぐぐっ」
 うめくジーンにミモザはさらに首をひねる。
「普通貴族って婚約者とかいるものなんじゃないんですか?」
「みそっかすの三男にそんなものはそうそういませんよ」
 むすり、と彼は不機嫌そうにそう告げた。
「親には好きにしろって言われてそれだけです」
「自由でいいじゃないですか」
「よくないですよ!亜鉛 の サプリ三男なんてね!どっかいいとこに頑張って就職するか婿入りしない限り穀潰し扱いで家族に冷たい目で見られるんですよ!長男のスペアですらないから家に居場所がないんです!!」
 なかなか複雑な立場らしい。彼はぶつぶつと「女の子が欲しいから産んだのに男の子が産まれちゃった結果の僕ですよ」とぼやいた。
「だから僕は頑張ってるんですよ。真面目に勉強して学園で優秀な成績をおさめ、先生に弟子入りして、エリート街道を走って決して無能だなんて思われないように……」
「その結果女の子との接触が無さすぎてこじらせちゃったんですか?」
「こじらせてません!」
 ジーンは拳を振り上げて力説した。
「女の子はお花と砂糖菓子となにか素敵なものでできてるんですよ!」
「女の子の構成要素は血と肉と骨ですよ」
「うそだー!!」
 しかしすぐに打ちのめされて耳を塞いで叫ぶ。本人も多少夢を見過ぎている自覚があるのだろう。しかし認め難いのか弱々しくあらがった。
「お、女の子はなんかいい匂いがして、髪の毛サラサラで、下品なことは言わないんだ」
「何もつけなきゃ普通に汗の匂いですし、髪の毛ぼざぼさの人もいるし、下ネタも言いますよ」
「イヤー!!」
 しかしすぐに返り討ちにあってうずくまる。
「うっうっ、僕の理想の女の子像が汚された」
 ミモザはその背中に優しくそっと手を添える。そうして穏やかに諭した。
「よかったですね、早くに目覚められて」
「最悪だ……」
 幽鬼のようにうめくジーンの背中をさすってあげながら、少しやりすぎたか、と反省する。
 まぁ言ったことはすべて事実である。
dha epa dhaゴーヤサプリメント マカdha epa dha亜鉛の効果

 周囲には濃密dha epa dha

 周囲には濃密な黒い霧が立ち込めていた。霧のように見えるそれはある人物から放たれゴーヤるオーラである。その証拠に、もっとも霧の深い場所に佇む人がいた。
 いつもサプリメント マカはリボンでまとめられている藍色の長い髪は無造作に背中に流され、理知的だった黄金の瞳は昏く淀み、全てを諦めたようだった。白い軍服は霧に覆われて、その身を守るように黄金の翼獅子が寄り添っている。その瞳は紅く、昏い光をたたえていた。
dhaどうして……」
 ステラは絶望に顔を歪めた。その青い瞳からは次々に涙が溢れて落ちる。
「どうしてっ!レオンハルト様っ!!」
「どうして?それを君が聞くのか……」
 レオンハルトは何かを投げ出した。それはオルタンシア教皇だ。彼は血まみれでぐったりとしていた。ステラはその姿に悲鳴をあげて駆け寄る。なんとか蘇生を試みるがどこからどう見ても手遅アントシアニンの効果れなことは明白だった。
 レオンハルトはそれを興味なさそうに見下ろしながら翼獅子に手を触れた。彼は心得たように自身を黄金の剣へと変じる。それを構えて、彼は告げた。
「君は聞いていたんじゃないのか?知っていたんじゃないのか?それとも本当に何もわからないのか……。まぁ、いい。もう、いい。何もかもがどうでもいい」
 剣を振りかぶる。アベルがとっさに飛び出して、ステラのことを抱えて逃げた。
 轟音を立てて、レオンハルトの斬撃が空間を切り裂いた。そこだけ地面がぱっくりと割れ、軌道上の建物もすべてチーズのようにアントシアニン焼き切れた。焦げた匂いと炎がちらちらと燃える。
「全てを壊す。この世界など、もうどうでもいい」
 風に煽られて右目があらわになる。そのただれた皮膚と紅玉の瞳を見てステラとアベルは息を呑んだ。

 悲報。敬愛する師匠が魔王だった。
(いや、ちょっと待て)
 寝起きの頭でミモザは考える。おかしい。ミモザの知るストーリーではレオンハルトは主人公を庇って死ぬはずなのだ。
 だとしたら今見た夢のストーリーは、
(2周目?)
 その瞬間にフラッシュバックのように夢でみた物語が一気に脳内に再生された。
「うぐっ」
 思わず顔を歪めて痛む側頭部を手で押さえる。
(……ああ、そうか、そうだったのか)
 そして納得した。
「僕はゲームの展開から、ちっともマカ サプリ抜け出せていなかったのか」

 2周目の物語は1周目の最後でステラが女神様にあるお願いをすることで幕を開ける。
 念願の聖騎士になると主人公は女神様への面会を許され、そして一つだけ願い事を叶えてもらえるというイベントが発生する。
 その際に出てくる選択肢は2つ。
 一つは『愛しいあの人と一生を共に』。
 これは1周目で攻略した恋愛キャラがいた場合に、そのキャラの愛情度とイベントを見た回数が基準値に達していると、そのキャラと結婚してエンディングを迎えるという王道展開へと続く選択である。
 そして問題はもう一つの選択肢。
『愛しいあの人を助けて』。
 これを選ぶことにより、画面は唐突にブラックアウトしてゲームは終わる。そしてタイトル画面へと戻るのだが、そこからもう一度初めからを選択してゲームを始めると1周目では攻略できなかった聖騎士レオンハルトが恋愛可能キャラクターとなり、そして物語が少しだけ変化するゴーヤのだ。
 そして序盤でわかる一番の違い、それが主人公の妹ミモザが何故かレオンハルトに弟子入りしているのである。
 何故そのようなことになっているのかゲームの中では詳しく説明されないが、母親に話しかけると「学校でいじめられていたミモザのことをレオンハルトくんが気にかけてくれていて……、お勉強も見てくれて助かるわ」というような説明台詞を喋ってくれる。
 つまりはそういうことである。
 これまでのミモザが経験したのと同じ手順でゲームのミモザもレオンハルトに弟子入りしたのだろう。
 つまり全くゲームの展開から抜け出せていない。
 このルートの恐ろしいところは、やはり物語中盤でミモザは死ぬことだ。
 そして終盤でオルタンシア教皇も死ぬ。その2つが原因となってレオンハルトの狂化は進行し、魔王となって主人公達の前に立ちはだかることになるのだ。
「ええー…」
 ゲームから抜け出せていなかったショックと、どうしたらよいかが思いつかない現状にミモザは頭を抱える。
 一応レオンハルトは攻略対象なので、この後主人公に倒され正気に戻るのだが、ミモザが死んでしまうクロムの効能のがいただけない。あとオルタンシア教皇が死んでしまうのもついでにいただけない。
(それにーー)
 もやっとした不快感が胸にこもる。この展開にまでいけばよっぽどのへまをしない限りはステラとレオンハルトは結ばれることになる。
(なんでこんなに不愉快なんだ……。まぁ、慕っている相手が気に食わない相手と結ばれると思えばこんなものか……)
 ステラとレオンハルトが寄り添っている姿など想像もつかない。想像しようとすると襲ってくる不快感に耐えきれず、ミモザはそれ以上考えることを放棄して別の方向へと思考を向ける。
(ーーようするに)
 ミモザとオルタンシアが死ぬとまずいわけである。逆に言えばその二つが起きなければレオンハルトがラスボス化することもない。
(本当に『僕』を殺したのは誰なんだ……?)
 全く思い出せない。今わかっているのはゲームの『ミモザ』は裏切られて殺されたということと、相手を『様』という敬称をつけて呼んでいたことだけだ。
(あとは状況的に、何かをお姉ちゃんに伝えようとして殺された……?)
 手がかりが少なすぎる。
 とりあえずミモザは死ぬなどごめんだ。
(犯人を……、見つけられればそれがベストだけど、難しいなら死ぬような状況を避けるだけでもいいはずだ)
 あと問題はオルタンシアだが、こちらは解決策が本格的に思いつかないのでひとまず保留とする。
「起きるかぁポリ ペプチド……」
 昨日の勝利の高揚などはすっかり消え失せて、ミモザはぐったりとしながら布団から這い出した。
 今日はこれから王都に向かうというのになんとも目覚めの悪い朝である。
亜鉛 の サプリアントシアニンの効果クロムの効能

「ミモザ、どうゴーヤ チャンプルー

「ミモザ、どうしてこんなことをするの?」
 亜鉛悲痛な表情でステラはそう叫んだ。視線の先には瓜二つの少女がいる。し亜鉛かしその顔はステラとは違いどこか硬質で人を見下すような冷たい目をしていた。
 その瞳は、紅色に染まっている。
「どうして?本当にわからないの?」
 彼アントシアニンの効果女は呆れたように首を振った。
「何度も言ったのに!何度も何度も何度も何度も!お姉ちゃん!貴方はやり過ぎたの!!」
「やり過ぎたって、一体何をっ」
「僕が間違ってるって思ってるんでしょ、自分は正しいと思ってる!」
 ミモザは涙をはらはらと流しながら笑った。
「だから僕の言うことを無視すゴーヤ チャンプルーるんでしょ?」
「無視なんてしてないわ、ミモザ!お願い!お姉ちゃんの話を聞いて!!」
 ミモザは首を振る。何度も、何度も。
「……もう遅いよ」
「ミモザ?」
「お姉ちゃん、あのね、……っ!?」
 そう言った瞬間、ミモザの口から血が溢れ出た。
「ミモザ!!」
「なん、で……?」
 その瞳は驚きと焦燥で満ちている。彼女が地面に倒れ伏すと鮮血は口からだけでなく、背中からも流れていることがわかった。
 背後から切り付けられたのだ。
 ステラ達は辺りを見渡したがどこにも人影はdhaない。
「ああ」とミモザは絶望の吐息を溢した。
「貴方も、僕を切り捨てるのですね、……様」
「ミモザ!?ミモザ!!」
 ステラが駆け寄り体を抱えるが、その体はもう熱を失い始め、意識は消えていた。
 ぱたり、とミモザの腕は地面へと落ちた。

 そこでミモザはガバッと布団から跳ね起きた。
「え、し、死んだっ!」
 いや、正確には死んでいないが。
 死んだのはゲームの中の『ミモザ』だ。
(思ったより意味深な死に方してたな)
 てっきりもっとこう、悪いことしやがってー、うりゃあ、サクッ、みたいなあっさりした死に方かと思っていた。
「っていうかもしかして黒幕みたいのがいる?」
 思わずチロに確認すると、チロも夢を共有していたのだろう、もっともらしく頷く。
「チチッ」
 殺意dha epa dha高めの相棒が、誰だか分かり次第殺してやろうぜ、と言ってくるのはいつものことなので今は横に置いておく。
(一体誰に『ミモザ』は殺されたのだろうか?)
 いつも肝心なところがわからない。しかしゲームのミモザは何者かに裏切られた様子だった。つまり、ミモザには仲間がいたのだ。
(何繋がりの仲間かはわからないけど)
 ゲームのミモザの行動を可能な限り思い起こしてみる。
 ミモザは嫌がらせキャラだ。そのミモザの仲間ということは、つまり主人公達の行動をよく思っていない人間が他にもいたということになる。
 しかしミモザの嫌がらせを思い起こしてみても、正直いまいちピンとこない。
 ミモザの嫌がらせは最初は学校の卒業試合でステラに敗北し、それに対して嫌味を言うところから始まる。そこから道中でステラ達に対し「そんなに野良精霊をたくさん狩るなんて酷い」とかいちゃもんをつけてステラから魔導石を奪ってみたり、試練の塔に着いた際に「そんなんじゃ中には入れらサプリメント マカれない」などと言って喧嘩をふっかけてきたりする。
 正直序盤の嫌がらせなど大した行為ではない。後半になるほど戦いを挑んでくる回数こそ増えるが、ミモザは雑魚キャラなので経験値稼ぎ要員として扱われていたように思う。
 うーん、とミモザは首を捻った。
「もしかして僕って重要人物だったり?」
 言ってみただけだ。
 チロはさぁ?というように首を傾げてみせた。
ポリ ペプチドクロム

 かくしてポリ ペプチド

 かくして、その少女は主人自ら送迎を行うという好待遇で屋敷に足アントシアニンの効果を踏み入れた。ゴーヤ チャンプルー
「………っ!」
 その姿にマーサは息を呑んだ。マーサだけではない。主人の弟子の姿を一目拝もうと並んで出迎えた使用人達みんなが目を見張った。
 主人のレオンハルトは美しい男だ。それ亜鉛 サプリはマーサも認める。そんな主人と並んでもなんら見劣りしないどころか、それ以上に可憐で美しい現実離れした少女がその隣には立っていた。
 美しい飴細工のようなハニーブロンドの髪に海の底を思わせる青い瞳は何かを憂うように伏せられ、長いまつ毛がそれを扇状に繊細に覆っていた。肌は雪のように白く透き通って唇はふっくらと桜色に色づいている。まるで職人が丹精込めて作った陶器でできた人形のよ亜鉛の効果うに繊細で作り物めいた美しい少女だった。
 少年のような地味で露出の少ない服装だけがその容姿を裏切っている。
「弟子のミモザだ」
「よろしくお願い致します」
 主人の簡潔な紹介に続いて粛々と、鈴を転がしたような可愛らしい声で彼女は告げた。その顔はなんの感情も表さず、やはり作り物めいている。
「ミモザ、ここにいるのでこの屋敷の使用人はすべてだ。滞在中何か困ったことがあれば俺がいない場合はこいつらに聞け」
「わかりました」
 そのやりとりは淡々としていてマーサが危惧していたような類の感情は一切感じとれなかった。
クロム何か質問はあるか?」
 レオンハルトの事務的な問いかけに彼女は少し考えこむと「行ってはいけない場所ややってはいけない禁忌事項などはありますか?」とこれまた事務的な質問を返した。
(なんか思ってたんと違う)
 あまりにも無表情でまるで主人と似たような雰囲気の少女に、マーサは己の危惧を裏切られたにも関わらず落胆した。そこでマーサは初めて自分が来客に対してこの屋敷に新しい風を吹き込んでくれるのを期待していたことに気がついた。
「そうだな、離れには近づくな。それ以外は好きにしてくれてかまわん」
 『離れ』。その単語にぎくりとする。この屋敷の最大の闇とも言うべき場所だ。主人の近寄り難さ、不気味さの象徴であると言ってもいい。あそこに何があるか知っている亜鉛 サプリ おすすめマーサは用事がない限り近づきたくはないが、この屋敷を訪れた人間はあの場所を気にして入りたがる。それも当然だ。秘されれば覗きたくなるのは人の常である。
「わかりました」
 しかし彼女は理由も聞かずにあっさりとそれに頷いた。それが興味のないフリなのかどうか、マーサには判断がつかない。
「あと修行の合間の空いた時間なのですが、ただ置いてもらうのは申し訳ないのでお仕事をもらえませんか?」
「いいだろう。ジェイド」
「はい、旦那様」
 彼女の要望に主人は鷹揚に頷き、呼ばれた蛙男はすっと近づいた。驚いたことに彼女は彼の容姿にもまったく無表情を崩さなかった。
「この子に仕事を教えてやってくれ。そうだな、仕事内容は……、俺の身の回りの世話だ。ミモザ、これはジェイドという。屋敷のことは彼に任せているから仕事は彼から教わりなさい」
「はい。よろしくお願い致します」
 深々と頭を下げる。マーサは主人の発言におやまぁ、と目を瞬いた。人嫌いの主人がゴーヤ チャンプルー身の回りの世話を任せる者は限られている。若い娘にそれをさせるのは初めてのことだった。
 マーサは必死にジェイドに『どういうことだろうねぇ、気になる関係じゃないか』とアイコンタクトを送ったがジェイドはちょっと引いた顔で『は?何?』という顔をするだけだった。それに内心でちっと舌打ちをする。有能な奴だがこういう察しの悪いところがあるのだ、ジェイドという男は。
「ではジェイド、さっそく彼女の案内を頼む」
「はい」
 大抵の若い娘であればジェイドに案内役をふられた時点で大概げんなりとしたり期待が外れたような表情をするのだが、やはり少女は顔色ひとつ変えずに「よろしくお願い致します」と頭を下げるだけだった。

 では頼むと言い置いてレオンハルトは執務室へと戻っていった。
 残されたのはミモザと託されたジェイド、そして自主的に残ったマーサだ。ジェイドは何故いなくならないのかという顔でこちらを見ていたがマーサは素知らぬ顔でミモザへ「マーサと申します」と自己紹介をした。
 ジェイドはそれにため息を一つ吐くと「では案内をするぞ」と先頭に立って歩き始める。
「ここが食堂」
「ここが書庫」
「ここが浴室」
 ジェイドは淡々と、マカ サプリそして素早く案内を済ませていく。雑談のざの字もないぶっきらぼうな態度に、しかし少女は特に文句を言うでもなく律儀に頷いていた。
「あそこが離れ。近づくなよ」
「はい」
 マーサは顔をしかめる。離れのことは目にするだけでも少し不快だ。
 そこはわざと人目から隠すように背の高い木で囲まれ、ちょっとした林のようになっていた。背の高い屋根がかろうじて見えるのみで言われなければ離れの屋敷があることなど気づかないだろう。
「で、ここが倉庫」
 ジェイドは遠目に見えるそれからすぐに視線を移し、すぐ近くのこぢんまりとした建造物を指差した。そこまでスタスタと歩いていくとこれまでもそうだったように一応扉を開いて中を見せる。
 ミモザもこれまで同様にひょこり、とお愛想程度に中を覗いていた。
 ふとマーサも習って近づき、目に入った物に思わず顔をしかめる。
「どうされました?」
 ミモザはそれに目ざとく気づいたらしい。マーサの視線を追って、見つけたそれをじぃっと興味深そうに見つめた。
 『それ』。そう、数日前に買い出しに行った際に目にした、レオンハルトの姿が描かれた皿である。
「これは……」
 少女は戸惑ったように言い淀み、しかし続きを口にした。
「踏み絵に似た不謹慎さと恐ろしさを感じる代物ですね」
「んっふ!」
 思わずマーサは吹き出しかける。それを呆れた目でジェイドが見つつ「これを食事に使うわけがないだろう」と告げた。
「え?じゃあどうするんですか?」
クロム本気で言ってるのか?飾るんだよ、棚とか壁に。鑑賞用だ」
「………」
 彼女はなんとも言えないような微妙な表情で首をひねると、その皿を手に取りじっと見つめたまま「夜中に目が合いそうで嫌じゃないですか?」ぼそりとこぼした。
「んっは、ははははは!まぁねぇ、そう思うわよねぇ!」
 今度は笑いを抑えきれなかった。そのままばしばしと自分の膝を叩く。
「でもねぇ、巷じゃお嬢さん方に人気なのよ。ほら、旦那様は格好いいでしょう」
「なんで紙じゃなくて皿に書いてあるんですか?」
「紙に描いてあるもののほうが多いわよ。でもなんでか皿に描いてあるのもあるのよねぇ、なんでかしら?」
 2人でじっとジェイドを見る。彼は嘆息した。
「ただの皿を高く売りつけたい商人の陰謀だ。売れりゃあなんでもいいのさ。刺繍とかのもあるだろ」
「へー」
 ミモザは感心したように頷く。
「でもこれ、ある意味で効能がありそうですね」
「効能?」
 訊ねるマーサに彼女はこくりと一つ頷いた。
「野良精霊も強盗も裸足で逃げ出しそうです」
「んは、んはっはっは!確かに!恐ろしくって寄って来れないかも知れないねぇ!」
「一体何が恐ろしくって、一体何が寄って来れないって?」
 愉快な気持ちで笑っていると、ふいに背後から声が響いた。聞き覚えのあるその静かで落ち着いた声に、マーサは錆びついた人形のようにぎぎぎ、と振り返る。
「何をこんなところで油を売っている」
「だ、旦那様!」
 不機嫌そうに眉間に皺を寄せて、この屋敷の主人が腕を組んで仁王立ちをしていた。
(ひぃぃぃぃ)
 マーサは内心で悲鳴を上げる。怒っている、ようdha epa dhaに見える。少なくとも不機嫌ではある。
 ああなんで自分はこんな軽口を叩いてしまったのかと後悔する。この気難しい主人の機嫌を直す方法などマーサはおろか、ジェイドも知らないだろう。
 ちらりと横目でジェイドの様子を伺うと、彼も困ったように脂汗をハンカチで拭いながら「旦那様、こんなところでどうなさいました?」と尋ねた。
 それにレオンハルトは親指で空を指し示す。視線を向けるともう日が傾きかけていた。結構なハイペースで屋敷を見てまわっていたつもりだったが、広いお屋敷だけあって結構な時間が経っていたらしい。
「仕事がひと段落したからな、ミモザに稽古でもつけてやろうと探しに来たんだ」
「それはそれは……」
 ジェイドは揉み手をしながら誤魔化すようにへらりと笑う。普段レオンハルトが不機嫌そうな時は使用人達は極力彼に近づかずにやり過ごしているのだ。レオンハルト自身も使用人達に好んで話しかけたり近づいてくることはない。このような事態は本当に稀だった。
「レオン様」
 その事態をどう見たのかはわからないが、平静な様子の声が響いた。ミモザだ。
 彼女はレオンハルトの注目を引くと手に持っていた皿を掲げてみせた。
「ん?ああ、なんだこれか」
 その皿を見てレオンハルトは面白くなさそうに眉をひそめる。
「これがどうした?確か試作品だか完成品だかを商人が持ってきたから倉庫に放り込んでいたんだ」
 その言葉を聞いた少女はとととっ、と軽い足取りでレオンハルトへと近づくと、背伸びをしてその耳元へと口を寄せた。レオンハルトもいぶかりながらもその意図を察して少し屈んで顔を近づける。
(おやまぁ)
 その親しげな様子をマーサは不思議な気持ちで見守った。ちらりとジェイドを見ると彼も目を丸くしている。
 そのまま何事かを彼女が囁くと、レオマカ と はンハルトは微妙そうな顔をして「君なぁ」と呆れた声を出した。
「何を言うかと思ったら、そういう事に興味があるのか?」
 その態度は呆れてはいるが先ほどまでよりもずっと柔らかい。普段の近寄りがたい硬質なそれとも違っていた。
「うーん、興味というか。こういうのがあったらそういうのもあるかなって思いまして」
 少女はレオンハルトのその態度を特別不思議には思わないようで自然なやり取りのように話を続けた。その言葉に彼は渋い顔をする。
「あったらどうするんだ」
 ミモザはレオンハルトの顔を見上げた。
「どうしましょう?」
 そのままこてん、と首を傾げる。
 レオンハルトは盛大にため息をついた。
「まぁたぶんあるんだろうが、俺は知らないし知りたくもない。くだらないことを言っていないで、修行でもするぞ」
 そのままレオンハルトは身を翻して歩き出す。ミモザは慌てて皿を元の位置に戻すと、呆気に取られているこちらに気づき、頭を下げた。
「案内ありがとうございました。一端失礼しますね」
「あ、ああ」
 ジェイドがなんとかそれだけ返した。最後にもう一度頭を下げると今度こそ少女はレオンハルトの背中を追いかけた。
「……おやまぁ」
 マーサは驚き過ぎてそうつぶやくことしかできなかった。

 ちなみにその後に庭で目撃された2人の『修行』の光景の壮絶さに、使用人一同は彼女には優しく接しようと決意を新たにするのであった。
サプリメント マカマカ サプリ亜鉛 の サプリ亜鉛亜鉛 の サプリ

 それが起こったのクロム

 それが起こったのは、ある意味必然であったのかも知れない。なにせアントシアニンの効果予兆はあり過ぎるほどにあっ亜鉛た。
 しかしすべての災難は最悪なことに同時に訪れたのだ。
「どういうことです?」
「そのままですよ。困ったことになりました」
 連絡を受けてかけつけたレオンハルトとミモザに、沈痛そうに額に手を当ててオルタンシアは言った。
アントシアニン「立てこもり事件と野良精霊の大量発生が同時に起きました」
 息を飲む。二の句が継げないミモザに代わり、レオンハルトは「立てこもり事件というのは?」と尋ねた。それに教皇は無言である手紙を差し出す。それはとても丁寧な犯行声明であった。

『第4の塔に長期滞在致します。大人7名、子ども3名、計10名にて実施いたします。試練の塔被害者遺族の会』

「閉クロム鎖しないのならば立てこもりを止める権利はない、といいたいのでしょう。まぁ実際、入場資格のある者が何日間滞在しようと規制するルールは存在しません」
「いや、大人はともかく子どもはだめってルールだったはずでしょう」
 ガブリエルがうめく。それにオルタンシアは力なく首を横に振った。
「入場管理を担っている人間を脅しつけて無理矢理入ったようです。厄介なのはここで彼らに死者でも出ようものならこちらの管理責任が問われることです」
「なぜ急にやり方を変えたのでしょう?」
 フレイヤが尋ねる。確かに、コラムを書いて人々の同情を引こうとポリ ペプチドいう最初の手段からは、随分とかけ離れた強引な方法であった。
「先日の…、レオンハルト君の件が効いているのかも知れません。彼女はレオンハルト君を取り込むのに失敗しましたから」
「それにしてもあまりにも手段のベクトルが違いすぎる」
 レオンハルトの訝るような言葉にミモザも無言で頷いた。最初の戦略はなんとも慎重で自分たちに利があるように上手く立ち回っている印象だったが、今回の件はあまりに強引すぎておそらく被害者遺族の会に世間はマイナスのイメージしか抱かないだろう。
「仲間割れ、でしょうか?」
 首をひねるミモザに、レオンハルトは「そうだな」と思案した。
「少なくともジェーンを影で操ろうという人間が2人以上はいるのかもしれない。彼らはそれぞれ意思の連携ができていないか、片方が功を焦りすぎたか」
「どちらにしろ重要なのは、このようクロムな自分自身を人質として盾にするようなテロリズムに我々は屈するわけにはいかないということと……」
 オルタンシアは首を振る。
「野良精霊の討伐のほうが優先事項であるということです」
 確かに自らの意思で危険に飛び込んだ者と、なんの落ち度もないのに危ない目に遭いそうな者ならば、後者が優先して守られるべきだろう。
「野良精霊の方に王国騎士団、塔の方に教会騎士団で分担してーー」
「というわけにもいかないのです」
 オルタンシアは眉間を押さえる。
「現在だけでも野良精霊の被害が10ヶ所以上で報告されていて数は増える一方です。両騎士団一斉にことにあたっても被害をすべて食い止められるかどうか……」
 レオンハルトも難しい顔で腕を組んで考え込んでいる。ミモザはちらりと教皇の執務机の上を覗き見た。王都周辺の地図に赤い印がばらばらと点在している。これら全てが野良精霊の大量発生箇所だとしたら、確かにとても人手が足りないだろう。
「ミモザ君、行ってくれませんアントシアニンの効果か?」
 ふいに声が響いた。オルタンシアからの急な名指しにびくりと震える。
「え?」
 その顔をまじまじと見つめるが、彼は真剣な表情を崩さない。
「両騎士団長は指示を出さねばなりませんから言わずもがな、レオンハルト君の戦力は野良精霊の方に必要ですし、英雄がテロリストの命を優先することははばかられます。しかし彼らを放置するわけにはいかない。ですから塔の方はミモザ君、君に任せられませんか?」
「……それしかないか」
 レオンハルトも難しい顔でそれに同意した。
「ミモザ、別に解決する必要はない。ただすべてを片付けて俺が駆けつけるまでの時間を稼いでくれ。第4の塔ならばお前の実力でなんとかなるだろう」
「はぁ、わかりました」
 つまりミモザは彼らの用心棒をして待っていればいいのだろう。いくら塔の中が危ないとはいえ試練に挑むわけではない。能動的に動かなければ危険も少ないはずだ。
「それなら、僕も行きます」
 手を挙げたのは爽やか少年ことジーンだった。
「戦力は多いに越したことはないでしょう」
(うーん…)
 その言葉にミモザはレオンハルトの顔を見る。彼は無言で首を横に振った。薄々わかってはいたが、どうやらレオンハルトは基本的に教会寄りのスタンスらしい。
「申dha epaし訳ありませんが……」
 案の定、オルタンシアは申し訳なさそうに首を振る。
「なぜですか!」
「塔の一度に入れる入場人数には制限があるのです。第4の塔は12人が上限です。これは我々が決めたものではなく塔がそれ以上の人数を拒絶するのです」
「なら僕もぎりぎり…」
「1人は連絡役に残しておきたいのです。中の状況が全く確認できなくなるのは困りますし、必要に応じて物資なども運ぶ必要が出るかも知れません」
 ジーンは悔しそうに歯噛みした。
 嘘ではないだろうがそれだけが理由ではないだろう。塔は教会の管理である。ミモザは教会寄りのレオンハルトの弟子だからいいのだろうが、王国騎士団団長の弟子の手を借りたくはないのだろう。それは国に借りを作ることと同義であるし、下手をすれば塔の管理について余計な横やりを入れられかねない。
 塔は金の卵を産む鶏のようなものだ。そのほとんどが塔の管理と維持費に消えるにしてもそこそこの収益にはなっているだろうし、なにより教会としては宗教的価値のある塔の利権を手放したくはないだろう。
「では、ジーンを連絡役にしましょう」
 その時フレイヤが強い口調で提言をした。王国騎士団側としてもこのような機会は見過ごせないらしい。
「ジーンならばいざとなればミモザちゃんと協力して戦えますし、王国騎士団に所属しているわけでもない。適任ですわ」
 名案と言わんばかりに花のようににっこりと笑うフレイヤアントシアニンの効果に、そこが落とし所と考えたのだろう、オルタンシアは「では、お願いしましょうか」と苦笑した。
「ただし、君はあくまで連絡役です。それ以上のことは越権行為ですよ」としっかりと釘を刺すことは忘れなかったのはさすがである。
マカ亜鉛 サプリ おすすめゴーヤ チャンプルー